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世界中で愛される「エルマーのぼうけん」 日本初の展覧会は「冒険をする心の大切さ」がテーマに

累計700万部を越えるベストセラー『エルマーのぼうけん』

 『エルマーのぼうけん』は、少年エルマーが、どうぶつ島に囚われたりゅうを助ける冒険を描いた物語です。ルース・スタイルス・ガネットが22歳のときに書き始め、挿絵は義母の画家、ルース・クリスマン・ガネットが描きました。チューインガムでトラを退治したり、棒付きキャンディーでワニに橋を作らせたり、ハラハラしながらも楽しさいっぱいの冒険が繰り広げられます。子どもの頃に読んで、夢中になった経験がある人も多いと思います。

音・光・風で冒険の世界を体感させる展示

 展覧会では、そのお話の冒頭の世界から始まります。猫に出会うところから始まり、どうぶつ島に渡って動物たちに出会う様子を、臨場感のある原画パネルを見ながら進んでいきます。少し薄暗い道に、左右からは獣の声。この展覧会では、音、光、風など、冒険を追体験するための空間構成に力を入れているといいます。いくつかの場面が再現された空間では、りゅうの翼の音や雲の影、雷や風と、冒険に向かうドキドキ感を、視覚、聴覚、感覚で感じられます。

 絵本の世界に入って遊べる展示は主に4つ。『エルマーのぼうけん』の続編、『エルマーとりゅう』の展示では、2人がみかんを食べるシーンを再現したものがあります。会場に落ちているのは、そのみかんの皮!本物かと見紛うほどよくできた皮です。まるでそこにエルマーやりゅうがいたようなリアル感があります。

 『エルマーと16ぴきのりゅう』の洞窟の様子も再現されています。りゅうの兄弟たちがミラーボールでフィーバー⁉のように見えますが、この会場では、ボタンを押すと各りゅうに光が当たる仕組みになっていて、条件がそろうと秘密のしかけが作動するのです。音響機器メーカーのオーディオテクニカと協力をして、りゅうたちが洞窟から脱出するにぎやかな場面が作り出されています。きっと子どもたちに人気の部屋となることでしょう。

ミネソタ大学のカーラン・コレクションなど貴重な原画も必見

 体感を楽しむ各コーナーを囲むように、鉛筆画の挿絵が展示されています。モノクロの表現の幅が素晴らしく、繊細で美しい原画は70年以上たった今も物語の世界に引き込んでくれます。展示では、文章のところどころにお話に出てくる小枝や羽をつけ、よりリアル感を増すように工夫しているそう。原画を貸し出してくれたミネソタ大学の図書館キュレーター、リサ・フォン・ドラセク館長は「ストーリーテリングの本当の楽しみを、大人にも子どもにも感じてもらえるように構成されていますね」と感嘆していました。

 当時の貴重な手描きの資料やぬいぐるみも展示されています。ガネットがこの本で義母に挿絵をお願いしたときは、自分の思い描くエルマーとりゅうの姿や地図のイメージを描き、りゅうのぬいぐるみを作って動きを伝えたと言います。「勇ましくて強そうなりゅうではなく、子どもが思わず助けてあげたくなるようなかわいいりゅう」にしてほしいと言っていたそうです。

大人も子どももまだまだ続く冒険の旅

 そして展覧会の最後は、「ぼうけん図書館」へ。ここでは、各界で活躍する100人がそれぞれが感じる「冒険の書」を展示しています。もちろん、海底や宇宙への大冒険の本もあれば、科学のような知的な冒険、空想未来の中への冒険、身近な場所でも十分な冒険の世界があります。やれそうもないことに挑戦すること、ピンチのときに機転をきかせること、大切な誰かのために勇気を出すこと、いろいろな刺激をもらえる本がそろっています。

 今回の「エルマーのぼうけん」展に合わせて、同建物内にある遊び場「PLAY! PARK」では、ワークショップとミュージアムツアーを開催しています。自分だけの不思議な植物を作って土に植える「スカンクキャベツ畑」、エルマーやりゅうのトレードマークをテープで作る「しましまになる!」、展覧会を観てからエルマーのようにみかんの皮をむいて置いていくというツアー「みかんを持って、美術館へ冒険にいこう」が開催されています。

 この夏は、かつての冒険少年・少女だった大人も、新しい世界へ飛び込みたい子どもも、「エルマーのぼうけん」展で、読書と冒険の世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。