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「ユー。」書評 性加害問題 構造の一端照らす

評者: 藤田結子 / 朝⽇新聞掲載:2023年09月09日
ユー。 ジャニーズの性加害を告発して 著者:カウアン・オカモト 出版社:文藝春秋 ジャンル:社会・時事

ISBN: 9784163917375
発売⽇: 2023/08/09
サイズ: 19cm/206p

「ユー。」 [著]カウアン・オカモト

 「ジャニーさんが当時15歳の僕や、その他のジュニアに対して性的行為を行ったことは悪いことだと思っています」
 元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんは今年4月、日本外国特派員協会でこう話した。ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害問題の被害者として、初めての実名・顔出しの記者会見。これをきっかけに報道が増え、他の被害者も告発した。「山が動いた」のだ。
 本書から、なぜ多数の子どもが性被害を受けたのか、その構造の一端を知ることができる。成功を夢見る希望者が事務所へ殺到。芸能界では普通、デビューした後売れるかどうかが問題だが、ジャニーズではCDデビューできれば成功がほぼ保証される。ジュニア間の競争の中、ジャニー元社長に気に入られるか否かが成功を左右する。彼は好き嫌いが激しく、無視される子もいた。一方で、性的要求に従った子には親密に振る舞ったという。
 この勇気ある告発には、カウアンさんの生い立ちが関係しているようにもみえる。本書によると、彼は愛知県豊橋市で日系ブラジル人3世の家庭で育った。数年前に初めてブラジルに滞在したときには、日本では半分否定されるアイデンティティーも肯定されると感じたという。一国の枠組みを超えて生きてきた経験から、異なる世界を想像でき、慣習を破ることができたのかもしれない。
 個人で声をあげたカウアンさんは、SNSで誹謗(ひぼう)中傷を受けている。一方、日本のメディアは組織的に沈黙し、もみ消しに加担してきた。7日の事務所の会見や、複数のテレビ局が発表したコメントを見ると、両者はこれまで通りビジネスを続けようとしている。国際的に人権侵害への取り組みが進む中、かつてない規模の児童虐待問題に対して、大企業がそんな立ち遅れた対応で済むのか。メディアも事実検証し、自らの責任を明らかにすべきだ。
    ◇
1996年生まれ。ミュージシャン。2012年にジャニーズ事務所に入所。16年までジャニーズJr.として活動後、独立。