1. HOME
  2. コラム
  3. ブックエンド
  4. 栗本斉『「90年代J―POPの基本」がこの100枚でわかる!』 音楽の「幸せな時代」俯瞰

栗本斉『「90年代J―POPの基本」がこの100枚でわかる!』 音楽の「幸せな時代」俯瞰

 オンラインのバンドセッションにベースで参加し、1990年代のJ―POPを演奏した時のこと。ギターの青年がぽつりと口にした。「いやー、懐メロ感満載ですね」。アラ還の私にとって懐メロは70年代の歌謡曲。90年代は新しい、と返したら、「じゃあ90年代の音楽ってどんな感じですか」と問われ、言葉に詰まった。

 もどかしい思いを抱えながら、ふと見かけた栗本斉「90年代J―POPの基本」がこの100枚でわかる!』を開いた。ライターで選曲家の著者が1年につき10枚のアルバムを選んで紹介する。読み進めるうちに、心のもやが晴れてきた。

 選択基準は売り上げではなく、作品性や時代感覚。たとえば「Original Love」はメジャーデビュー作「LOVE!LOVE!&LOVE!」(91年)を挙げる。代表曲「接吻(せっぷん)」などは含まれていないが、グルービーな感覚が「渋谷系」サウンドを象徴している、との説明に納得。大御所への目配りもいい。ヒット曲「真夏の夜の夢」を収録した松任谷由実「U―miz」(93年)は、「モンスター化した90年代のユーミンの面白さ」との指摘に、思わずひざを打つ。

 音楽CDの生産金額は98年がピーク。音楽の「幸せな時代」を俯瞰(ふかん)できる地図ともいえる。(星野学)=朝日新聞2023年11月4日掲載