翻訳家 さくまゆみこさんのオススメ
「サンタクロースは空飛ぶ宅配便ではありません」(ポプラ社) クリスマスが近づくと、4年生の黒須三太(くろすさんた)のげた箱には、希望するプレゼントを書いた手紙が次々に入るようになる。1年生の間で、三太に言えば願いがかなうといううわさが立っているらしい。そんな時、近くのコンビニのバックヤードからサンタクロース宛てのポストが見つかり、そのうちトナカイのルドルフまで現れる。日本を舞台にしたサンタ物語で、クスッと笑いながら楽しく読める=小学3年生から(市川宣子作、高橋和枝絵、1650円)
「スノーマン」(評論社) 冬のある朝、男の子が目覚めると外はいちめんの銀世界。男の子はうれしくなって外にとびだし、大きなスノーマン(雪だるま)を作る。真夜中になって動き出したスノーマンを男の子は家の中に招じ入れ、あちこち案内してまわり、ごちそうも並べる。スノーマンはお礼に男の子を連れて雪の舞う夜空を飛ぶ。ファンタジックな一夜の楽しい冒険を描く絵本で、文字がないので多様な解釈が可能。今出ている新版は色が鮮明になっている=幼児から(レイモンド・ブリッグズ作、1650円)
ちいさいおうち書店店長 越高一夫さんのオススメ
「『はい』『いいえ』ほうこく」(理論社) 子どもたちの毎日が「だいすき」と「うれしい」でいっぱいになるようにするには「すきなことがすきなようにできるばしょとじかん」が必要で「せんそう」や「ぼうりょく」はいらないと子どもたちは主張します。子どもたちの心によりそい、その声にしっかりと耳を傾けてきた作者の思いが伝わってくる絵本。子どもたちのいきいきとした表情からは、読み手も元気をもらえます=小学校低学年から(浜田桂子作、1650円)
「たのしい川べ」(岩波書店) 川べで静かに暮らしているモグラやネズミたちの生活は、いつもヒキガエルが引き起こすとんでもない事件によって一変する。アナグマはヒキガエルに心を入れ替えさせようとするが、なかなかうまくいかない。冒険からなつかしいわが家に戻ったモグラが、そこでクリスマスを祝う場面がとても楽しそうで印象的。この季節にぜひ読んでほしい=小学4年生から(ケネス・グレーアム作、E.H.シェパード絵、石井桃子訳、2200円)
絵本評論家 広松由希子さんのオススメ
「いつかきっと」(あすなろ書房) 「なんだか へん」だと気づくことがある。やってもむだと言われても、やってみなくちゃわからない。今はひとりでも、いつかきっと。つらいときは泣いて、またいっしょにやり直せる。2021年のバイデン大統領就任式で自作の詩を朗誦(ろうしょう)した若き詩人の、胸に届く希望の絵本。過去形ではなく、いま未来のための文体。貼り絵の細部、前後の見返しなど、目にもあたたかな励ましのメッセージがこもっている=小学校低学年から(アマンダ・ゴーマン文、クリスチャン・ロビンソン絵、さくまゆみこ訳、1650円)
「ゆうやけにとけていく」(小学館) 夕暮れ時、風が吹き、色も空気もにおいも変わっていく。笑い声も汗もふくれっつらも、夕焼けにとけていく。これから昇る日の出に気分が高揚するのと対照的に、沈む入り日は気持ちをなだめ、ほぐしていくもの。めくるごとに開ける夕焼けの情景が、美しく染み入る。それぞれの場所で生きる人たちの今日を受けとめ、安らかな夜に導く=5歳から(ザ・キャビンカンパニー作、1870円)
丸善丸の内本店 兼森理恵さんのオススメ
「クリスマスマーケット~ちいさなクロのおはなし~」(福音館書店) 広場のクリスマスマーケットにあらわれた黒い子犬。お店の人たちにかわいがられクロと名付けられますが、だれも飼うことが出来ません。ある日、スノゥという白い犬のぬいぐるみを連れた、なーちゃんという女の子と出会います。クロに別れをつげ歩き出したなーちゃんはスノゥを落としてしまいます。スノゥをなーちゃんに届けるために、クロの冒険がはじまります。
クリスマスに手にしたかけがえのないもの。クロとなーちゃんのあたたかな未来が胸に流れ込み、圧倒的な幸福感に包まれます=5歳から(降矢〈ふりや〉なな文・絵、1650円)
「クリスマス物語集」(偕成社) 世界中にあるクリスマスの物語から選びぬかれた14編がおさめられたこの物語集には、心静かに平和と奇跡を願いながら向き合いたい。一編一編そっとページをめくっていくと、きっとどんな人でも全世界の幸せを祈らずにいられなくなるでしょう。クリスマスがさらに特別な日になる一冊です=小学校中学年から(中村妙子編訳、1540円)=朝日新聞2023年11月25日掲載
※抽選で各2人にプレゼントします。締め切りは12月10日。申し込みはhttp://t.asahi.com/kodomohon11まで。