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幻の鳥、なぜ復活? 「カワセミ都市トーキョー」 佐藤健太郎が選ぶ新書2点

『カワセミ都市トーキョー 「幻の鳥」はなぜ高級住宅街で暮らすのか』

 「清流の宝石」と呼ばれ、その美しい青色の羽で人気を集めるカワセミ。だが環境破壊のため、1960年代には居住地域を奥多摩まで後退させていた。ところが意外なことに、このカワセミが都心、それも麻布や赤坂などの高級住宅地に戻ってきつつあるという。柳瀬博一(ひろいち)カワセミ都市トーキョー 「幻の鳥」はなぜ高級住宅街で暮らすのか』(平凡社新書・1210円)は、これらカワセミの生態を通して、東京の街を見つめ直した一冊。見過ごしていた各種の小動物たちや、街の土台となった地形など、都市の中の自然に目を向けるきっかけになるだろう。
★柳瀬博一(ひろいち) 平凡社新書・1210円

『あっぱれ! 日本の新発明 世界を変えるイノベーション』

 日本の技術力が低下している、とよく耳にするようになった。だが、世界を変えるような新産業を生み出す力が、まだまだこの国にはある。ブルーバックス探検隊あっぱれ! 日本の新発明 世界を変えるイノベーション』(講談社ブルーバックス・1210円)では、産業技術総合研究所(産総研)に取材し、さまざまな分野の新発明を紹介している。空気をたくさん含んだ断熱れんが、3億年に1秒しか狂わない光格子(ひかりこうし)時計、悪臭を吸い取ってエネルギーに変える青色顔料など、その幅の広さに驚かされる。技術力低下なんて言わせない、という研究者たちの心意気が行間から伝わってくるようだ。
★ブルーバックス探検隊 講談社ブルーバックス・1210円=朝日新聞2024年2月3日掲載