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博物館長としての矜持が伝わる「科博と科学」 佐藤健太郎の新書速報

 2023年8月に国立科学博物館が行ったクラウドファンディングは、大きな話題を集めた。篠田謙一科博と科学 地球の宝を守る』(ハヤカワ新書・1056円)は、同館の館長が書き下ろした一冊。人類学の現在、博物館の役割、コロナ禍における奮闘、クラファンの裏側など、内容は多岐にわたる。一貫して伝わってくるのは、過去から未来へと「地球の宝」を伝承してゆく、博物館長としての矜持(きょうじ)だ。科学を文化のひとつとして定着させたいという、筆者の強い意志が文面からにじみ出てくるかのようで、最後まで読み応えがある。評者も、久しぶりに科博を訪れてみたいと思わされた。
★篠田謙一著、ハヤカワ新書・1056円

 一方、花木良中学数学で磨く数学センス 数と図形に強くなる新しい勉強法』(講談社ブルーバックス・1100円)は、比較的簡単な計算を通じて、読者を数の世界へいざなってくれる。見慣れた九九表に潜む思わぬ不思議、単純な四則演算の繰り返しなのに、数学者にもいまだ解けない超難問などなど、楽しく読みながら数学センスを磨くことができる。数学に強くなりたい学生はもちろん、苦手だった数学を学び直してみたいといった層にもお勧めだ。ものの見方をちょっと変えてみる、発想を転換するトレーニングにもなりそうだ。
★花木良著、講談社ブルーバックス・1100円=朝日新聞2024年3月9日掲載