本の最後にある「おわりに」から目を通したら、「あ、もしかして『おわりに』から派?」と書かれていて思わず笑った。著者と会話をしたような気持ちになった。
著者は自称「話しかけられ王」の現役書店員。プロポーズで指輪に添える本を探しにきた人、ついつい人と比べて悩む人――。いろんな思いを抱えて書店を訪れた客の話に耳を傾け、そっと本を薦めていく。
カリスマ書店員とはまた違う。近所のかかりつけ医と似たような、漠然と本を探しているときに頼れる「かかりつけ書店員」といった感じか。
本の場所を書店員に尋ねることはあるが、本書のような関係を築いた経験がまだない。でも、今日はちょっと勇気をだして、話しかけやすそうな書店員に本の相談をしてみよう。そう思わせてくれた。(森本未紀)=朝日新聞2024年7月6日掲載