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〈オススメ〉小田豊二「デラシネの花」 聞き書きの楽しさ伝える

 聞き書きで心がけることは何か。話し手に憑依(ひょうい)して、目の前にいるような「語り口」で書くこと。「言い足りなかったこと」などを整理して、言い直すこと。その「人」の存在を後世に伝えること。

 最後の幇間(たいこもち)の一人、悠玄亭玉介『幇間の遺言』や俳優・三木のり平『のり平のパーッといきましょう』などを手がけた小田豊二(とよじ)さんはそういう。8月に80歳で亡くなった彼の自伝が刊行された。

 旧満州から引き揚げてきた「根無し草(デラシネ)」の孤独な少年は、ラジオで落語や浪曲を聞き、耳からの知識を喜んだ。週刊誌記者を経て、作家・井上ひさしの劇団の雑誌「the座」編集長になる。歌舞伎やお座敷芸にも詳しいライターとして玉介師匠の話をまとめ、聞き書き作家へ。各地で講座を開き、人生にふれる聞き書きの楽しさを語ったという。=木星舎・各1980円(石田祐樹)=朝日新聞2025年12月13日掲載