東日本大震災と福島の原発事故を機に、美術批評家の著者が「書くことへと追い立てられ」るように発表してきた批評などをまとめた大著だ。災害や事故、感染症、戦争が繰り返され、既存の枠組みが揺らぐ中、「道標(みちしるべ)」となる表現者たちを批評の言葉によって「彫り出」そうとする。
自身も動く。被災地を訪ね、人々と対話し、福島の帰還困難区域内に美術家たちの作品を展示する「見に行くことができない展覧会」の運営にも関わる。そして、身近(ドメスティック)な実感を伴う「体温」をもつ表現の可能性を見いだす。
「末世(まっせ)の芸術」とは「人類の滅亡を前提とする芸術と、その芸術についての批評」という。破壊が繰り返される世界にあってもなお、芸術にはできることがある、という信念が伝わってくる。(山盛英司)=朝日新聞2026年2月14日掲載