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城戸志保「どくだみの花咲くころ」 友情とは違う、名前のない関係

『どくだみの花咲くころ』(1)

 小学5年生の信楽(しがらき)くんは、急にキレたり意味不明な行動をするため、クラスで浮いている。校庭にハムスターの死体を何度も埋めているなど不穏な噂(うわさ)もある。一方の清水(きよみず)くんは、勉強も運動もできて家は裕福。が、「人から妬(ねた)まれたり嫌われるのがいちばん怖い」ので、ソツなく目立たぬよう心がけている。清水くんにとって信楽くんは、なるべく関わりたくない存在だ。

 ところがある日、図工の時間に信楽くんが作った謎の作品に魅せられてしまう。近所のどくだみ生い茂る空き地に信楽くんが残していった草人形にさらなる衝撃を受けた彼は、「信楽アート」を信奉&収集することになる。

 とにかく信楽くんのことが気になって仕方ない彼の惑乱ぶりが、痛痒(いたがゆ)い笑いを誘う。ほとんどストーカー化した言動には信楽くんもドン引き。自他ともに認める優等生の清水くんだが、実は彼のほうも相当な変わり者だ。

 そんな二人の友情とは少し違う名前のない関係が愛(いと)おしい。清水くんの心内発話の饒舌(じょうぜつ)さに加え、セリフのないコマも雄弁。二人の目力は強く画面の圧も高めだが、ふと立ち現れる詩的な瞬間に鼻の奥がツンとなる。まさにどくだみのような臭みと解毒作用を併せ持つ奇妙な世界にハマりそう。=朝日新聞2024年7月6日掲載