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現代歌人協会賞にAIエンジニアの睦月都さん 有限の身体の特権、真実求め詠む 

 歌人の登竜門として知られる第68回現代歌人協会賞(現代歌人協会主催)の授賞式が6月、東京都内で開かれた。第1歌集「Dance with the invisibles」(角川書店)で受賞した睦月都(むつきみやこ)さん(33)はAIエンジニアでもあり、「人間であることの証明」が求められる時代に「真実を求めて歌を詠み続けられたら」と語った。

 「幻想的」と評される作風も、実際に起きたことをそのまま書いていることが多いと語り「私は女性同士でダンスをしていて、女性のパートナーもいて、政治に関心があって、コロナ禍という時代を生きて。そういった現実が、私にとって大事な真実でもあったと思うようになった」と振り返った。

 AI時代にあって人間に残された特権は「実際に足を運び、手で触れて、目で見て、味わい、香りを感じて得た経験」だと解説。「有限の身体を持つ人間である私が歌を詠むことの意味でもあると考えています」と話した。

 選考委員長の吉川宏志さんは、受賞作から〈人らみな羊歯の葉ならばをみなともをのこともなくただ憂ふのみ〉〈けはひなく降る春の雨 寂しみて神は地球に鯨を飼へり〉の2首を紹介。「性別に束縛される社会を抜け出し、女性同士の連帯を志向しようとする。文語旧かなを用いた柔軟な韻律が快く、2首目のようなスケールの大きな発想も見られる」と評した。

 選考委員の駒田晶子さんは〈わたしの彼女になつてくれる? 穂すすきのゆれてささめく風の分譲地〉などの歌を引用し「私の見えていなかった部分を実感させてくれる一冊」と述べた。(佐々波幸子)=朝日新聞2024年7月17日掲載