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「ムラカミ」を継ぐ作家たち 5作家の討論など収録

 「村上以後」をキーワードに文学の最前線を語り合ったシンポジウムが『世界とつながる日本文学 after murakami』(柴田元幸編、早稲田新書・990円)としてまとまった。村上春樹の登壇はないが、多方面への影響からその存在の大きさが伝わってくる。

 シンポジウムは昨秋、早稲田大学で開かれた。主催した国際交流基金は、本書でも原稿の翻訳などで関わっている。

 核となるのは、日本の柴崎友香を含めた5人の作家によるパネルディスカッションだ。米国のブライアン・ワシントンは『海辺のカフカ』から記憶やケアについての問いを受け取り、チェコのアンナ・ツィマは『アフターダーク』のファンタジーに夢中になった。台湾の呉明益(ウミンイ)は17歳の時からの読者。兵役中に短編を読んでいた。韓国のチョン・イヒョンは作家としての姿勢を学び、大惨事後の人々の思いに小説で向き合ったという。

 海を越えた日本文学が多彩な読者と出会い、また新たな一編を生む。収録された5人の作品からもそれがよくわかる。(中村真理子)=朝日新聞2024年11月2日掲載