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人生いまがラッキーセブン♪「大地の五億年」風に言ってみる 中江有里の「開け!本の扉」 #22

(Photo by Ari Hatsuzawa)

 「人生100年時代」というフレーズを聞いたのは、いつごろだったか。
 100年を折り返して1年とちょっとの地点にいる私。

 長いはずの人生。気づいたら残り半分を切っている。
 更年期まっさかりの体はあちこちが痛い。最近は不眠気味で疲れが取れない。
 この正月、ひさびさに挑戦した餅つきも、腰を痛めないようにそろそろと杵をついた。

 まあ100歳は理想として、現実の平均寿命は男女ともに80歳を超える
 人生を1日(24時間)にたとえると、今の私は夕方5時あたりか。冬なら日暮れの時。

 もうそんな時間になっていたなんて……数字は残酷だ。

 そこで唐突だが、2024年の阪神タイガースで気になった数字を振り返ってみたい。

 まずは2023年新人王&シーズンMVPに輝いた村上頌樹投手。
 2004年の成績は7勝11敗。防御率2.58。一昨年の1.75に比べれば物足りないが、決して悪くはない。
 野手はチャンスに強かった。それを測るのが「得点圏打率」(ランナーが二塁、三塁にいる場面での打率を指す)。
 2024年の得点圏打率、2位・大山悠輔選手、3位・森下翔太選手、7位・佐藤輝明選手、8位・近本光司選手。トップ10に阪神が最多の4人ランクインしている。
 その結果がリーグ2位。
 (ちなみに優勝した巨人の選手は、2024年得点圏打率ランキングのトップ10に入っていない)

 思わず「その数字、ほんまにアテにしていいの?」と言いたくなる。数字よりも活躍した印象の選手もいるし。

 ふたたび我が数字=年齢を振り返る。
 気持ちは若いころと変わらなくても体は正直で、相応にくたびれている。一昨年は自宅で倒れて緊急入院した。やっぱりそこそこ数字は正しいのだろう。
 ただいま夕方5時すぎの自分。このまま日が暮れていくのを見ているだけなんて、なんか悔しい。

 藤井一至『大地の五億年』は、5億年前に生まれた「土」がどのように変化を遂げてきたのかを描いた、土の研究者によるドキュメンタリー。
 土があるから植物があり、植物があるから土も生まれた。ニワトリと卵のような関係の植物と土。
 5億年に生まれた土は、地球の「皮膚」となって、大地を覆い、微生物から恐竜、そして人間といった多くの生命をはぐくんできた。

 今も畑の土から近所の花壇の土、我が家の観葉植物の土と、探せば土はすぐそばにある。
 これら土は5億年の月日を経て今にある……数字が大きすぎて、ピンと来ないけど。

 ちなみに地球ができたのは、さらにさかのぼって46億年前と言われている。
 そこでわかりやすくするために、本書では相対的にこう説いている。

 「46歳の地球おばさんが5年前に家庭菜園をはじめて、1年前から働いていた恐竜兄さんが半年前失踪し、10日前に生まれたばかりの小人たちが大規模な温室栽培をはじめた。これが人類である」

 スケールが大きすぎるが、つまり人類は地球や土と比べて、生まれたばかりのひよこみたいなものということ。

 ひよこの人生を一日にたとえて嘆いている場合じゃなかった。

 そうだ。どうせたとえるなら野球の試合がいい。
 人生100年ならまだ5回表だ。まだ先発ピッチャーが投げている。
 80歳まで生きるとするなら、今は7回あたりかな。ちょうどラッキーセブン♪

 どちらにせよ試合は9回までわからない。
 なんなら延長戦もあるかもしれない。人生を最後まであきらめずに戦いたいのだ。

 自分の土壌は自分で耕したい。どんな芽がでるかをたのしみに。これまでも、これからも。