古河久人『「最高のビジネス人脈」が作れる食事の戦略』インタビュー 「幹事力」が広げた人の縁

週に4~5回の会食を重ね、年間800人近くと会う。多くは自ら主催し、そこでは見知らぬ人同士が結びつく現象が起こるという。この本の帯に書いてある「スーパーコネクター」のゆえんだ。
自身の性格を「内向型」と言い切る。だが、本書では「3人会」「幹事力」「昭和歌謡」といったキーワードをちりばめ、会食を通して「最高の人脈」をどう築き、広げたのか、経験をもとにしたノウハウを記している。
大卒で入った住友生命では、渉外畑を歩んだ。1990年代後半からは、生命保険の同業他社の経営破綻(はたん)が相次いだ。「次はうちでは」という不安のなか、企業を超えた破綻に備える仕組みづくりに忙殺された。
仕事が少し落ち着いたころ、漠然と将来を考えた。「生きがいや楽しみを仕事以外の何に求めればいいのか」
転機は20年ほど前、40代半ばのころ。仕事上の知人に、グラフィックデザイナーの麴谷(こうじたに)宏さんが主催するワイン好きが集まる食事会に誘われた。フランスで経験を積んだ麴谷さんが語るワイン醸造家とのエピソードは「洒脱(しゃだつ)で面白く、もっとワインを知りたいと思わせた」と振り返る。麴谷さんの会に繰り返し足を運ぶうち、漫画家や脚本家ら著名人との縁もできた。その体験が「自分も幹事に」との突破口につながっていく。
ただ、後悔もある。
仕事に追われたときも、会食に活路を見いだしたころも、3人の子育ては妻に任せきりだった。授業参観に行ったことがない。一家で海水浴に出かけた日にはスーツを持参し、翌朝1人で仕事に向かった。「いまの時代なら通用しない。とんでもないことをした」と話す。
子どもたちが独立したいま、2~3組の夫婦での会食を設けては、妻を誘い出す日もあるという。
職場や仕事の担務が変わるこの4月こそ、人脈を広げるチャンスだと考える。
「名刺ファイルをめくって、久しぶりに会いたい人に連絡を取ってみて。懐かしい話に花が咲き、そこを起点に世界が広がるはずです」(文・伊藤宏樹 写真・関口聡)=朝日新聞2025年4月5日掲載