国立科学博物館の篠田謙一館長が3日、東京学芸大学付属世田谷中学校で「自分の好きを語る」と題した特別授業を行った。人類の起源を探る人類学者として携わってきた発掘・研究のあらましに137人の生徒が聴き入った。
篠田さんはこのほど、女性の化石に注目した「カラー図鑑 フェミナ・サピエンス全史」と題するスペインの絵本の日本語版を監修。出版元の西村書店を介して、日ごろ接する機会が少ない中学生と交流する機会を得た。
「我々の直接の祖先は6万年ほど前にアフリカを出たホモサピエンス。でも私たちにはネアンデルタール人のDNAも数%入っています」
DNA分析が可能になった1980年代以降、ミイラや人骨化石などから、さまざまな情報がもたらされた。国内外の現場で経験を積んできた篠田さんの話に生徒たちも興味津々。
発見は先史時代のことにとどまらない。茗荷谷駅近くのマンション建設現場で見つかった人骨は宣教師ジョバンニ・シドッチのものらしいとわかり「顔の復元もできました」。
篠田さんは人類学のどんなところに魅力を感じるのか。生徒からの質問に「思ったことと違う結果が出たとき、間違ったときが面白い。研究って答えがない。そこがいちばん面白い」と応じた。(藤崎昭子)=朝日新聞2025年9月17日掲載