ISBN: 9784990263782
発売⽇: 2025/09/03
サイズ: 12.8×18.8cm/384p
ISBN: 9784309039756
発売⽇: 2025/07/28
サイズ: 13.1×18.8cm/212p
「ホームレス文化」 [著]小川てつオ/「ロバのクサツネと歩く日本」 [著]高田晃太郎
ホームレスとは事情によりやむなく陥る状態で、当人は早く脱却したいものだと思い込んでいた。異常気象や襲撃者、「追い出し事業」(再整備工事)などに対し野宿は無防備で、安心快適な生活環境とはいえまい。
だが公園で20年以上暮らす小川さんは自らの意志でホームレスを選んでいる。その生活を綴(つづ)ったブログを編纂(へんさん)した『ホームレス文化』の登場人物にも、病気などで一時的に施設に移っても結局テント村に戻ってくる人たちがいる。一体なぜ?
本書によれば彼らは、やりたくない仕事に多くの時間を奪われず、かといって無職でもなく好きなことをしている。たとえば小川さんは絵のある物々交換カフェ「エノアール」を開いている。ゴミやもらい物を工夫して、極力他人に管理されず自らの生活をつくり、肩書きや競争なしに、年齢を超えて助け合う対等な関係の中で各人が役割を見いだし、強烈な個性で輝いている。それを著者は「豊かさ」と呼ぶ。
とはいえそれはホームレスでなければできないことではない。様々な差別や侮辱、暴力に立ち向かう労力よりは、多くの人が「一般的な暮らし方」を選ぶだろう。なんと勁(つよ)い人たちなのか。
会社を辞め、貯金残高を気にしつつ50万円でロバを買い、その背に荷物を乗せて徒歩で日本中を旅した高田さん(当時33歳)も然(しか)り。ロバが常に草を食べられるよう願って「クサツネ」と名づけ、一日20~30キロを歩いては、ロバと寝食できる場所を探しテントを張る。何故そんな苦労をわざわざ?と思うが、健気(けなげ)なクサツネの風情に惹かれて出会う見知らぬ人々の温かさは、何かと「自己責任」が叫ばれるこの国にこれほどオープンで親切な人たちがいたかとほっとさせる。
2冊を通して出会える一様でない生き方は、私たちの固定観念を緩め、何があろうとなんとかなるという自信と解放感を与えてくれるようだ。
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おがわ・てつお 1970年生まれ。2003年から都内でテント生活を始める▽たかだ・こうたろう 1989年生まれ。元新聞記者。