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「理科の先生のメガネ」書評 ふとした日常に働く科学的思考

評者: 田島木綿子 / 朝⽇新聞掲載:2026年03月07日
理科の先生のメガネ:かけてみると世界が変わる (ミネルヴァ・サイエンスライブラリー) 著者:矢野充博 出版社:ミネルヴァ書房 ジャンル:教育学

ISBN: 9784623099948
発売⽇: 2026/02/12
サイズ: 18.8×1.4cm/260p

「理科の先生のメガネ」 [著]矢野充博

 タイトルのネーミングが良い。内容は周囲に満ち溢(あふ)れる不思議や疑問に「気付く」「観(み)る」「考える」という章立てで進み、自分の答えを「試行する」こと、周囲へ「表現する」ことはいつ何時でも可能だと教えてくれる。各項目も短く、著者が勧めるように日めくりカレンダーのように読み進めるのもいい。
 カルガモ、ブタの内臓から自身の持病まで、様々なことを探究する著者は理科の先生が天職なのだろう。コーヒーに砂糖を入れるか入れないかで溶解度を考えるとは、ふとした日常にも科学的思考が働いてしまうのかと、同じ科学の世界に身を置く者として笑みがこぼれる。
 「考える」の項で紹介されている二分間ブレストはぜひ試したい。小さい頃からこうしたことが当たり前になれば、人は考える生き物なので、頭の中で繰り広げられる思考は無限になる。
 観察や試行の際に顕微鏡や肉眼はもちろん、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)も取り入れ、ヒトが周囲の環境の自然や生物を分かろうとする技術の変遷も知る。特に「試行する」では具体例が数多く紹介されており、疑問に対する答えを導き出す方法がとてもわかりやすい。「たくさん飲んだ」という感覚は飲んだ時間に関係すると仮説をたてて、乳酸菌飲料をストローを使って飲むなど、身近にあるもので自分の考えは試行できる。さらに、疑問が生じた事柄には必ずといっていいほど同じ疑問を持った過去の人々の答えやその経緯が残されていることもわかる。
 そして、成果を周囲へ表現し共有することの大切さも述べており、その方法として、文章からショートムービー、ARコンテンツまで幅広く紹介している。レポートを書くときのポイントという項目は、学生さんたちには参考になるのではないだろうか。
 次は、音楽や体育など他の先生のメガネもかけてみたいものである。
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やの・みつひろ 1975年生まれ。和歌山大教育学部付属中学理科教諭。第37回東書教育賞(優秀賞)。