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国民国家建設の視点で読み解く「世界史の中の明治維新」 辻浩和の新書速報!

  1. 『世界史の中の明治維新 なぜ日本は「帝国」を目指したのか』 加藤聖文著 SB新書 1155円
  2. 『旧家の日記にみる幕末明治 「関口日記」が語る庶民の暮らし』 西川武臣著 有隣新書 1320円

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 ウクライナや中東での紛争は、国際秩序の再編や安全保障という形で我が国の政治や外交を揺さぶる一方、食料品やガソリン価格の高騰により我々の家計をも直撃している。同様に、グローバル化が始まった19世紀の人びとも世界史の巨大なうねりの中に身を置いていた。

 日本近現代史家による(1)は、明治維新の本質を国民国家建設に見出(みいだ)し、国民創出と領土画定が東アジアに与えた影響を描く。諸国の思惑や政治思想の展開を踏まえ、ペリー来航から韓国併合までを読み解く叙述は明快でわかりやすい。特筆すべきは、天皇のもとでの平等を説く「一君万民」論が上層農民や下級武士に支持され、身分制解体と国民形成を導いた点だ。階級社会への民衆の不満が、国民国家建設の世界的潮流と結びつくダイナミズムは鮮烈である。

 近世・近代史家による(2)は、同じ時期の様子を上層農民の視点から描く。横浜開港場の近くに住んでいた村役人・関口家の日記には、ペリー来航や生麦事件、五榜(ごぼう)の掲示、地租改正、自由民権運動など近代の激動が記録される。その中で同家の人びとが海外情勢や政治状況について情報を収集し、外国米・石油類の販売、輸出用ハンカチの生産などに次々と乗り出す点は目を引く。身分制解体と職業の自由化を受け、いち早く世界経済の末端に参入し始める姿に、時代を生きる主体としてのたくましさを感じる。

 同じ時代をマクロとミクロの視点で読み比べる楽しさを味わいたい。=朝日新聞2026年4月4日掲載