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難解な文章を解きほぐす「シモーヌ・ヴェイユ思想入門」 上村剛の新書速報!

  1. 『シモーヌ・ヴェイユ思想入門』 今村純子著 光文社新書 1144円
  2. 『「共感」の思想史 ヒューム、スミスから現代へ』 坂本達哉著 岩波新書 1100円

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 ヴェイユが20世紀の西洋思想史で放つ輝きは、おそらく唯一無二である。だが文章は難解で、容易に近づきがたい。(1)はそんな哲学者の印象深い文章を平易に紹介することで、人が生きる意味を真摯(しんし)に問いかける。虚偽が真理の、不正義が正義の顔をする世の中で、人間であることは難しい。それでもなお、不幸を滑稽であると捉え、愛によって悪を壊し、善なるものをこの世を超えて希求するのがヴェイユである。正しく生きられない人にそっと寄り添いつつも、どこか峻厳(しゅんげん)なその文章は、生きるのに困難な多くの人に、ヒントと希望を与えてくれる。数多く紹介される映画や小説のシーンも印象的だ。

 他者との関係を真摯に探究したのは、むろんヴェイユだけではない。人間は利己的か、利他的か。この本質的な問題に挑んだのが、18世紀スコットランドの哲学者たちである。ヒュームとスミスの思想を、共感をキーワードに論じる(2)は、弱肉強食のエゴイズムを前提とした現代社会観を揺さぶろうとする。スミスといえば『国富論』で利己的な経済人を論じた人、という表面的な理解をこえて、功利主義をめぐる二人の関係や、正義、公共の利益といった重要な概念が丁寧に解説される。特に、なぜ人がお金を稼ぐのかというと、他者が自分の富に共感するのが理由だとして、虚栄心すら共感と重なるのが面白い。カギ括弧の多用はやや読みづらいが、信頼できる専門家によるヒューム、スミスの入門書は実に貴重である。=朝日新聞2026年5月30日掲載