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戦後80年の政策を追う「日本社会と外国人」 中村佑子の新書速報!

  1. 『日本社会と外国人』 朴沙羅著 中公新書 1320円
  2. 『ルポ 支援という生き方 貧困問題の最前線』 室谷明津子著 ちくま新書 1056円

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 (1)は、戦後80年の日本の外国人政策を追う。この上なく丁寧に研究書から政府刊行物、海外比較まで網羅する果敢な研究姿勢に敬服した。が、最後に「私は本書が広く読まれることを願っていません」と書く。なぜなら「日本社会が総体として解決すべき問題の『原因』として、外国人を見出(みいだ)し憎悪を向けるくらいなら、誰も外国人に関心を持たない方がずっとまし」だから。著者にそう切なく言わせるものとは、日本の政策の裏に垣間見える人権軽視の態度だろう。日本は朝鮮や台湾等、旧植民地出身者から一律に日本国籍を剝奪(はくだつ)した。政府は「移民」という言葉をタブー視し、外国人の定住を推進しない。つまり家族形成や福祉に繫(つな)がる道を閉ざし続けた。結局それは外国人を便利な使い捨て労働力としか見ない、今のこの国の姿に行き当たる。

 現代の貧困は、スキマバイトやネットカフェ宿泊など、都市の中心でより「見えにくく」なった。彼らを取り込む貧困ビジネスも広がる。そんな「見えにくい」困窮者に一時的な住まいを提供する「つくろい東京ファンド」を追った(2)で描かれる支援者たちは、さながらヒーロー物を読むようで個性豊かだ。ITに強く起業家のような風体のメンバー、外国人問題のエキスパート……。彼らは静かに淡々と困り事を抱えた当事者の下へ駆けつける。つねに団体の資金難が綴(つづ)られるが、こうした現場にこそ資金の集まる社会にできぬものか。=朝日新聞2026年52日掲載