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「ゲンロンy」創刊号、1万部突破 90年代生まれ、スマホ世代が新雑誌 

「ゲンロンy」創刊号

 雑誌の休刊が相次ぎ、読者をスマホに奪われたと業界で怨嗟(えんさ)の声が上がる中、「スマホ世代の総合誌」をうたう雑誌「ゲンロンy」が3月に創刊された。

 1990年代生まれの編集者、批評家ら4人が編集委員を務め、寄稿者も90年代生まれがほとんど。最若手は2001年生まれだ。発売前から重版がかかり、発行部数は1万部を突破した。批評家の東浩紀さんが立ち上げた出版社「ゲンロン」が版元だが、東さんが編集長の「ゲンロン」本誌とは異なる新機軸を打ち出した。

 なぜスマホ全盛のいま、雑誌なのか。創刊号の巻頭言では「わたしたち自身でも、にわかには信じがたい挑戦」としつつ、動画やポッドキャストを通じて人文知を発信する「令和人文主義」の活況に言及。その波を受け止めるには「強度のある〈場〉が必要だ」とする。

 一冊を通して読むと、日頃スマホ画面で指をすべらせて出合う話題が、いかに複雑に世界とつながっているかを実感するだろう。特集1は「令和カルチャー!」。社会学者・山内萌さんの論考は、昨今の編み物ブームなど、SNSにあまた投稿される少女たちの「どうかしそうな毎日を、生きのびるために手づくりされる自己表現」を「かわいいDIY」としてとらえる。そして、昭和・平成レトロの男性中心的な文化や暴力性までをもかわいくしてしまい「少女の居場所や力を示す方向に書き換え」るその働きを、複雑化したフェミニズムの文脈の最先端に落とし込んでみせる。

 特集2「帝国をつくろう」では、トランプ米大統領のSNS投稿やショート動画など、社会や政治を動かすようになった「指先」の操作に着目し、現代を「フィンガーメイド時代」と位置づけたアーティスト・布施琳太郎さんの論考などを展開。「古くて新しい帝国」が台頭しようとする現代を多面的に考察する。

 3月下旬には、東京・五反田で「ゲンロン友の会総会」が開かれ、「ゲンロンy」の寄稿者らによるトークイベントもあった。「我々は令和人文主義をもう一歩先に進める」と01年生まれの国学研究者・石橋直樹さんが気を吐くと、編集委員の植田将暉さんは「ゲンロンyの『y』とは、ヤングであり、野心である」と応じた。植田さんはまた「みなさんの度肝を抜く雑誌でありたい」と話し、「第2号は『予想外』と聞いて想像するものをさらに超えていく何かを展開したい」と意気込んだ。

 年1冊刊行予定。15日と21日には五反田のゲンロンカフェで関連イベントがある。詳細はゲンロンカフェのホームページ(https://genron-cafe.jp/)。(興野優平)=朝日新聞2026年4月8日掲載