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三島由紀夫賞「はくしむるち」 山本周五郎賞「見えるか保己一」 評価のポイントは

三島賞に決まった豊永浩平さん(右)と山本賞に決まった蝉谷めぐ実さん

 第39回三島由紀夫賞と山本周五郎賞が14日に決まった。三島賞は豊永浩平さんの「はくしむるち」(講談社)、山本賞は蝉谷(せみたに)めぐ実さんの「見えるか保己一」(KADOKAWA)。どう評価されたのか、選考委員と受賞者の会見から振り返る。

 三島賞の「はくしむるち」は沖縄を舞台にした長編小説。サブカルチャーに親しむ現代の若者の日常と、米軍の上陸におびえる戦時中の若い日本兵の日々を交互に描き、人々を隔て続ける有形無形の壁の存在を問い直す。

 選考委員の多和田葉子さんは、「書きたいことがある人、しかも書ける人だという声が大きかった。エンジン力が群を抜いていた」と語った。「沖縄は文学史上でも重要なテーマだが、その沖縄を白紙に戻して、新しく書いてみようという意欲作だと評価された」

 著者の豊永さんは那覇市出身。大学在学中の2024年に「月(ちち)ぬ走(は)いや、馬(うんま)ぬ走(は)い」で群像新人文学賞を受けてデビューし、野間文芸新人賞も受賞した。

 「自分が生まれ育った土地についてまずペンをふるってみないと、書きたいものを書いたことにならないという思いがあった。デビュー作でまだできていないことがあると感じたが、『はくしむるち』ですべて書き終えたかといえば、やっぱり現時点の答えでしかない。作品を更新しつつ、自分のなかの沖縄像も更新していきたい」

 山本賞の「見えるか保己一」は、江戸時代を生きた全盲の国学者、塙保己一(はなわほきいち)を描いた蝉谷さんの意欲作だ。「全盲ながらも偉業を成した保己一」といった聖人化をせずに一人の人間として見つめ、振り回された周囲の人々にも焦点を当てた。

 選考委員の小川哲さんは「予定調和にしないぞ、どこまでも保己一の視点を借りて『見えない』ということを描き切ってやるぞという強い覚悟がよかった。聖人君子ものの伝記だと思って手に取った人を、想像もつかないところに連れて行ってくれる」と評した。

 著者の蝉谷さんは、1992年、大阪府生まれ。2020年に「化け者心中」でデビューし、以降も歌舞伎を題材にした長編時代小説を発表してきた。

 蝉谷さんは今作について、これまでの作品にも通底する「人間を描く」というテーマを持ちながらも、題材を変える挑戦などにより、まったく違うものになったと振り返った。「もっと挑戦しても良いと言っていただいたよう。自分の強みはここだと制限することなく、現代小説などにも挑戦したい」と意気込んだ。(編集委員・柏崎歓、堀越理菜)=朝日新聞2026年5月20日掲載