ISBN: 9784409511237
発売⽇: 2026/02/26
サイズ: 15.4×21.4cm/402p
ISBN: 9784409511046
発売⽇: 2026/01/30
サイズ: 15.4×21.4cm/360p
「トランスインペリアル・ヒストリー」 [編]水谷智、馬路智仁、山田智輝/「心の帝国」 [著]ロバート・ギルデイ
帝国研究が盛んだ。グローバル化や大国の帝国的行動が、「帝国」への関心を高めている。
『トランスインペリアル・ヒストリー』が提示する「間(トランス)・帝国(インペリアル)」(ただし編者たちは「間」との訳には満足していない)という分析の枠組みは、従来の一帝国研究や帝国どうしの比較ではなく、「帝国間の競合と協力、連関」の「絡まり合った過程」に光を当てる。米・日の両帝国のはざまで揺れ動く沖縄人や、大英帝国の植民地統治を日本に翻案し新たな知を生む戦前の知識人などが取り上げられる。
それぞれの植民地主義が相互にどう認識されたのか。白人帝国主義に対抗してインド独立派が戦前の日本の汎(はん)アジア主義に寄り添う協働関係と、帝国日本に植民地化される朝鮮とインドの植民地間連帯がもつれ合う。宗主国の違いを超えた植民地間のつながりは、アフリカ、台湾や香港などにもみられる。
同書が「帝国」の横の連関を論じるのに対して『心の帝国』は縦、すなわち時間軸に沿って帝国の変容を追う。英仏の中東やアフリカでの植民地支配と、そこでの領土と労働の搾取。脱植民地化が進展した1960年代以降も新植民地主義は続き、第三世界が石油など資源ナショナリズムを振りかざしても、先進国主導のグローバル金融帝国にのみ込まれた。
それに対して本格的に反旗を翻したのが、政治的イスラムだ。イラン革命を嚆矢(こうし)としてアルカイダ、イスラム国と、西側帝国主義への抵抗が繰り返される。かつて帝国に貢献した植民地出身者が移民として英仏に流入すると、「逆からの植民地化」とみなされ、それまで植民地という「向こう側」で起きていた抵抗が、「こちら側」を揺るがす。それに呼応して排外主義と自国中心主義が台頭し、目指されるのは「帝国2.0」だ。
「心の中」にある帝国の栄光幻想を捨て、帝国経験の苦悩を背負え、との締め括(くく)りが、刺さる。
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みずたに・さとし▽ばじ・ともひと▽やまだ・ともき▽Robert Gildea 英オックスフォード大教授
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「心の帝国」は池田亮、和田萌訳。