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塚田良道さん「天界図像の古代学」インタビュー 歴史的な広がり押さえる

塚田良道さん

 熊本県の江田船山古墳から出土した国宝の銘文入り鉄刀。この刀身に銀象嵌(ぞうがん)で表現されていた鳥獣の文様は何を意味するのか――。埴輪(はにわ)研究で知られた考古学者が、地道な謎解きに挑んだ良作である。

 埼玉県生まれ。遺跡を見て歩くのが好きな「考古少年」だった。高校生の時、埼玉稲荷山古墳から出土した鉄剣に金象嵌銘文が発見される。テレビで解説をしていた同志社大学の森浩一教授に憧れて、同大へ進学。卒業後は故郷の行田市教育委員会に就職し、馬形埴輪が出土した酒巻古墳群の発掘に関わったのを機に埴輪研究に取り組んだ。「『踊る埴輪』は実は馬引き(馬子)だった」との論考を発表したことで知られる。

 本書では、教育委員会勤務から大正大学文学部教授に転じた著者が、同僚の仏教美術史や日本古代史の専門家の助言を受けつつ、古墳時代に散見される鳥・龍・魚などの文様が、実は中国・後漢の墓などに飾られた画像石などに見られる、蓮(はす)をめぐる魚と鳥の文様にルーツがある可能性が高いこと、それらが朝鮮半島から日本へ至り、江田船山の「魚を追う鳥+花」という表現となっていくまでを明らかにしている。

 「弟子としては、森浩一先生が提唱した『古代学』を体現する本がいつか書きたかった。65歳の退職前に形にでき、ほっとしています」

 蓮のまわりをめぐる魚や鳥は、天の北極を示す図像表現で、それは古墳時代においては「王権の象徴であると同時に、敵を破り、自らを守り、地上世界を統治するという意味を持っていた」と語る。

 同様の文様は、古墳時代には刀だけではなく、鏡や冑(かぶと)の庇(ひさし)などにも表現されている。

 「図像を読み解くのに重要なのは、推理力ではなく、その主題が何なのかをつかみ、それを歴史的な広がりで押さえること。答えは思わぬところにあるものです」

 4月から、新設の情報科学部デジタル文化財情報学科教授を年限つきで務める。「好奇心を抱き、科学の目で謎を解明する――そんな学生を育てたい」 (文・宮代栄一 写真・岡原功祐)=朝日新聞2026年4月11日掲載