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ピンク地底人3号さん「おもちゃの指輪がほしいねん」 劇作家の2作目の小説はポップでシュールな万引きGメンの物語

ピンク地底人3号さん

 この1年で小説と戯曲の著名な賞を立て続けに受けた劇作家のピンク地底人3号さんが、2作目の小説「おもちゃの指輪がほしいねん」(集英社)を出した。野間文芸新人賞に輝いたデビュー作「カンザキさん」に続き、自らのバイト経験を踏まえたポップでシュールな物語が展開する。

 語り手はスーパーで万引きGメンとして働くアカリ。思いもよらぬ行動をとる万引き犯を日々捕捉するうち、若手のホープと見なされるようになった。そんなある日、アカリはシャネルのニットが似合うカオルさんと運命的な出会いを果たす。

 万引きGメンは警備会社の保安員。派遣先の店で万引き行為の警戒にあたる。「カンザキさん」の舞台となった配送会社と同様、2年ほど勤めた経験職とあってか、万引き犯を現行犯逮捕できる要件の「保安五原則」の手順をはじめ、内幕の描写がやけにくわしい。

 アカリの内面も手に取るように伝わってくる。商品隠匿の瞬間を初めてみたときに〈世界がスローモーション〉になった感覚、捕まえた際に〈保安員と万引き犯の力関係が100対0〉になる高揚、誰何(すいか)した際に商品が出てこない誤認の恐怖。経験に基づくとはいえ、なみなみならぬ人間観察力を感じさせる。

 「そもそも盗む行為が不自然なんです。ただ買うわけではないから、身体の動きに無理がでてくる。場数を踏めば誰でも見えてくるようになる。むしろ必要なのは、ずっと立って見ている忍耐力でしたね」

 万引きGメンの仲間たちもユニークだ。アカリの師匠で〈捕捉率ナンバーワンの生きる伝説〉タカエさん、紫のリボンがトレードマークのヨシムラさん、白髪角刈りで眼光鋭いワタじい、個性的な面々が集う。

 「演劇も小説も、すべての登場人物が個性的であってほしいと思って書いてます。世の中に個性的じゃない人なんていない。年寄りなのにガッチリ体形とか、いつもキラキラした服を着ているとか、外見だけでも個性。そんな一点から人物を膨らませていく」

 そもそも本人の筆名が個性的だ。名乗り始めたのは同志社大学の演劇サークル時代。関西を拠点に活動を続け、阪神・淡路大震災の記憶をめぐる物語「明日(あす)を落としても」で、今年の鶴屋南北戯曲賞を受けた。

 本作はアカリがカオルさんにあてた恋文のような手紙の形でつづられている。なぜ手紙を書いたのか。万引きGメンのお仕事小説に思えた物語は意外な結末へ向かう。圧倒的な疾走感をたたえて。でも3号さんは浮かぬ顔だ。

 「のみ込みのいい言葉は割と書けるんですけど、もっとかみ応えのある言葉を書きたい。何回読んでも発見があるような。やっぱり小説も書かなきゃ上達しない。早く上達したいです」(野波健祐)=朝日新聞2026年8月5日掲載