石坂浩二さんからのメッセージ
人間が生命をつないできた長い時間、言葉が傍らにあったことに想(おも)いをはせてください。いつか本は滅びるかもしれない。でも、私は人類が、埋もれたものを探るようにページを繰ることに喜びを感じる時代が来ると信じています。
石坂浩二さんお薦めの本
『カフネ』阿部暁子
講談社 1870円
主人公が主観的に語っていく彼女がもう一人の主人公となり、いつのまにか周囲を客観的に語る魅力ある人物となって読む者の心に拡(ひろ)がってくる。キャラクターや威力は新しくはないが、二人が作る世界は切なくうれしい限りである。
『バリ山行』松永K三蔵
講談社 1760円
バリ山行とは登山道ではなく正規ルートをはみ出した登山をいう。ルール違反といわれるこの魔力に取りつかれた男と、その道のベテランが現実の社会で置かれ、まるで先は読めない。語り口の見事さと構成のしたたかさを味わいたい。
『人類の祖先に会いに行く』グイド・バルブイアーニ 栗原俊秀・訳
河出書房新社 2475円
300万年前、「ルーシー」は樹(き)から落ちて亡くなったらしい。近代までの15人を紹介し、人間はなぜ人間になったのかの歴史をひもとく。“人間は必要に応じて変化してきた。人間には種は一つしか存在しない”。この言葉が胸にひびく。
=朝日新聞2026年9月10日掲載