ダラス・キャンベル「描かれた宇宙探査 宇宙を夢見た人々の記録」 軌跡というより奇跡に近い
よく“最初に○○した人はすごい”というけれど(ウニを食べた人とか)、最初に宇宙に到達した人に勝るものはないだろう。人類で初めてそれを成し得たユーリ・ガガーリンの、その瞬間の心情――信念や好奇心と共に去来したであろう不安や恐怖は想像の及ぶところではない。しかし人類は、行けると確信したから行ったわけだ。
当然、人類は一足飛びにそこに至ったのではない。進出までには、長い時間をかけて慎重に、時に大胆に、様々な思索や挑戦がなされてきた。それは何も科学や物理学だけではない。文学的な思考や絵画などの視覚芸術によるインスピレーション、あるいは生活の中で培われてきた細やかな知恵と工夫もあるだろう。いわば人類のあらゆる叡知(えいち)の結集として、宇宙への進出がある。
本書はそうした過程において重要な役割を担った人物や出来事にフォーカスをあて、人類の宇宙進出を紹介する本である。
読み進めていくと、一見何の関係もないエピソードが、時代を隔てて繫(つな)がったりするのだが、もはやそれは軌跡というより奇跡に近い。たとえばジュール・ヴェルヌの小説『月世界旅行』とその100年後のアポロ計画との恐るべき符合の数々など、枚挙にいとまがない。ぜひこの本を、ドキュメンタリーではなくフィクションとして映画化してほしいものである。最高にアガる作品になるはず。=朝日新聞2026年10月3日掲載