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「現代子ども文化考」書評 子どもの持つ野性的リアリズム

評者: 佐伯一麦 / 朝⽇新聞掲載:2017年05月28日
現代子ども文化考 「子ども」に寄り添って 著者:山中恒 出版社:辺境社 ジャンル:社会・時事・政治・行政

ISBN: 9784326950539
発売⽇: 2017/03/29
サイズ: 20cm/249p

現代子ども文化考―「子ども」に寄り添って [著]山中恒

 皇国少年たちを描いた「ボクラ少国民」シリーズ、また『転校生』(原作は『おれがあいつで あいつがおれで』)など大林宣彦監督により映画化された作品の原作者として知られる著者は、高校生のときに宮沢賢治の『どんぐりと山猫』を読んで感動し、「めちゃくちゃで、できの悪い児童文学の作家になりたい」と思ったという。本書では、戦時下教育を受けた子ども時代を振り返りながら、戦前回帰の風潮がみられる現代の子どもを取り巻く状況を鋭く解析し、直言する。
 いじめ問題が起こると、「昔はこういうタチの悪いいじめはなかった」という声に対して、70年以上も前の自身の体験から反証する。教師による皇国民の錬成と称する暴力もあった。
 副題にある「『子ども』に寄り添って」とは、教育勅語に象徴されるように、大人の価値観で、子どもはこうあるべきもの、と捉えるのではなく、子どもの持っている野性的なリアリズムをみようとする姿勢だろう。