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「権力に魂を売った」研究の災厄

闇に魅入られた科学者たち―人体実験は何を生んだのか [著]NHK「フランケンシュタインの誘惑」制作班

 科学の闇に迫る番組シリーズの中から、テーマを「人体実験」に絞って書籍化したのが本書だ。
 18世紀・英国で活躍し「近代外科学の父」と称されながら、裏では墓泥棒と手を組み、遺体をかき集めては切り刻む「稀代(きだい)の解剖マニア」ジョン・ハンター。ついには見せ物小屋の巨人にまで「金をやるから、死んだら解剖させてくれ」と詰め寄る。
 あるいは第2次大戦後、“悪魔の手術”「ロボトミー」を普及させるため、その名をつけた車を運転して全米を巡る手術旅行に出た精神科医ウォルター・フリーマンなど、科学者たちが繰り広げる奇行の数々。
 その全編を貫くメッセージは科学者と国家権力との関係。研究の後ろ盾を得るためナチス政権にすり寄り、ホロコーストに“科学的な”根拠を与えた優生学者オトマール・フォン・フェアシュアー。旧東ドイツの国家的ドーピングを主導し、メダルと引き換えに選手の身体を犠牲にして出世街道を歩んだ医師マンフレッド・ヒョップナーなど、権力に魂を売った科学者たちがもたらす災厄を紹介。いかなる理由でも、科学を政府や軍事のために使うことは拒否すべきだと本書は説く。=朝日新聞2018日4月21日掲載