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みんなしあわせ、朗らかな旅

「ひげじまん」

 長いひげが立派なおおなまず。自分のひげが世界一だということを自慢するために旅に出ます。そこで数々の「ひげじまん」と出会うのですが……。
 あたたかくてどこか懐かしい関西弁にのせて語られるおおなまずの旅。自分のひげが一番だという猛者どもに散々な目に遭わされても、おおなまずはおおらか朗らか。自慢のひげが大変なことになっても、なんだかほかほかしあわせそう。今までのことはどこへやら、周りのみんなも、のんびりとしあわせそう。
 おひげはもういいの? と突っ込みたくなるけれど、おおなまずのゆるーい表情を見ているともう何も言えません。体中の力が気持ちよく抜け、しっかり笑えて、しあわせになれる絵本です。(丸善丸の内本店・児童書担当 兼森理恵)
 ★こしだミカ作、小学館、税抜き1400円、5歳から

「オオカミを森へ」

 舞台は20世紀初頭のロシア。貴族のペットだったオオカミを野生にもどす仕事をしていたマリーナは、暴君の将軍に従わず、逮捕監禁されてしまう。マリーナの娘フェオは、兵士イリヤや革命家のアレクセイ、そして子どもたちやオオカミたちと共に、母を取り戻しに都へと向かう。くっきりしたイメージを追いながら楽しめる冒険物語。(翻訳家 さくまゆみこ)
 ★キャサリン・ランデル作、原田勝訳、小峰書店、税抜き1700円、小学校高学年から

「いっこ さんこ」

 カボチャが「いっこ」、めくると「さんこ」。いろんな物が登場しますが、出てくる言葉は二つだけ。どっしり、ころんと「いっこ」の個体。いくつも集まる「さんこ」の群れ。「いっこ さんこ さんこ いっこ」とリズムにのり、数字以前の感覚を絵から読み取ります。目が喜び体が踊る絵本体験を赤ちゃんから。(絵本評論家・作家 広松由希子)
 ★及川賢治・竹内繭子作、文渓堂、税抜き860円、0歳から=朝日新聞2017年10月28日掲載