一冊の本は、さまざまな人たちの仕事の結晶。小説『本のエンドロール』(安藤祐介著、講談社・1782円)を読んで、改めてそう感じた。
主人公は印刷会社の営業部員・浦本学。32歳で主に文芸書を担当している。出版社から仕事を取り、工場の印刷機の稼働率を上げるのが使命だ。プロローグに「この先本が売れなくなるのは火を見るより明らかで、印刷業界は客観的に見れば斜陽産業、沈みかけた船だ」という言葉がある。浦本は奮闘するが、常に葛藤が隣り合わせ。
作家、編集者、装丁家、印刷会社や製本会社の人々の仕事もきめ細かに、愛情を込めて描かれる。著者の3年にわたる取材の成果だろう。「一冊の本が読者の心を突き動かし、人生を変えることもある」という一文は本に携わる人たちの矜恃(きょうじ)だ。
本のエンドロールとは奥付のこと。著者、発行者、出版社、印刷所、製本所などが載っている。この本では、さらに工夫が凝らされ、まるで映画のようなエンドロールが。温かな余韻が残る。
(西秀治)=朝日新聞2018年4月7日掲載
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