劇団「五反田団」を主宰する前田司郎の作品には人々の切実さとちょっと抜けた笑いが混じり合っている。『異常探偵 宇宙船』(中央公論新社、1944円)は、不思議な事件専門の探偵・宇宙船が、役立たずの美しい助手や鳩(はと)を狩る野生児らを率い、秘密の趣味を持つ女性の死を追う小説だ。
「思い浮かべてみたまえ」と読者諸君に呼びかけ、少年探偵団や怪人が登場。思いっきり江戸川乱歩だが、実は少年は青年だし怪人は変人(変態)というずらしが前田流。大仰な文体と浮世離れした設定の調和は、登場人物たちの奇抜さや滑稽さの裏にある彼らなりの必然があらわになるにつれ崩れていく。絵空事に見えた殺しや探偵たちの行動も逆に生々しくなる。
しかし、悲しい過去故に宇宙船が作り上げた妄想が現実に押し潰されそうになるとき、文体にふさわしい活劇が展開される。語り手は問う。「我々の正気は狂気なのである。宇宙船の狂気もつまりは正気なのではないだろうか」
私たちだって、妄想混じりの現実を生きている。(滝沢文那)=朝日新聞2018年4月28日掲載
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