1. HOME
  2. コラム
  3. 新書ピックアップ
  4. 新書ピックアップ(朝日新聞18年5月12日掲載)

新書ピックアップ(朝日新聞18年5月12日掲載)

本間龍・南部義典著『広告が憲法を殺す日』

 それぞれ広告会社員、衆院議員政策担当秘書として働いた経験を持つ2人による対談。憲法改正の国民投票法は広告宣伝にほぼ規制がなく、改憲を目指す自民党が圧倒的に優位に立つ仕組みだと指摘。発議のスケジュールを読んで自民党の広報を担う電通がCM枠を事前に押さえ、制作を戦略的に準備するなど、資金と広告力で反対派を圧倒できるとみる。何が起こるかを想定し、海外の事例にならい制度改定案を示す。
 (集英社新書・778円)

山﨑広子著『声のサイエンス』

 副題は、「あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか」。認知心理学をベースにした研究をもとに、人々がときに「声という音」によって言葉以上に動かされていると指摘。その影響力は、自らの声によって自分自身にも及ぶ。だが、著者の調査では、日本人の約80%が自身の声を嫌いだと回答したという。心身を健全に保つ「本物の声」とは何かを説く。
 (NHK出版新書・886円)

中澤渉著『日本の公教育』

 教育や学校は何のためにあるのか。近代学校制度の発達から財政難に伴う競争の導入といった歩みを踏まえ、教育の経済的な効果や社会的意義について論じる。理想や経験に基づいて語られがちなテーマだが、教育社会学が専門の著者は歴史や統計など内外の研究成果に基づきあくまで客観的かつ実証的に捉えていく。
 (中公新書・950円)

水野一晴著『世界がわかる地理学入門』

 世界には熱帯や寒帯、乾燥帯などの気候と多様な地形に準ずる自然環境があり、そのなかで人間がそれぞれに工夫した暮らしを営んでいる。アフリカ、南米、インド、ヨーロッパ、アジアなど世界50カ国以上を訪れた地理学者の著者が気候帯ごとに自身のエピソードを交えて紹介し、図版とともに地理の因果関係を解きあかす。新しい視点で世界旅行をした気分になれる一冊。
 (ちくま新書・1026円)