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「インテリアデザインが生まれたとき」書評 アートと響き合う創成記

評者: 五十嵐太郎 / 朝⽇新聞掲載:2015年09月06日
インテリアデザインが生まれたとき 六〇年代のアートとデザインの衝突のなかで 著者:鈴木 紀慶 出版社:鹿島出版会 ジャンル:暮らし・実用

ISBN: 9784306046238
発売⽇: 2015/06/03
サイズ: 19cm/179p

インテリアデザインが生まれたとき [著]鈴木紀慶

 建築では建築史という学問が確立しており、それをもとに作品が位置づけられ批評的な言語がつくられているが、インテリアデザインにはそれがなく、一過的に消費されてきた。が、この数年ようやく歴史をまとめる研究書が登場し、編集者の著者によるこの本も一連の流れに含まれる。
 戦後しばらくは百貨店の室内装飾部が商業空間のデザインを牽引(けんいん)し、1960年代後半に「インテリアデザイン」の言葉が定着した。その領域を確立した剣持勇と彗星(すいせい)のごとく現れた天才・倉俣史朗を軸に、本書は創成期の歴史を語る。とくに興味深いのは、アートとの交流という視点を導入したことだ。倉俣はデュシャン、ジャッド、田中信太郎に影響を受け、高松次郎、横尾忠則、三宅一生らと共同作業した。その後も杉本貴志が若林奮(いさむ)、川俣正らと仕事を行う。おそらく倉俣は建築の軽やかなデザインの動向にも影響を与えているが、本書は将来書かれるであろう横断的なデザイン史の礎になるものだ。
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 鹿島出版会・2376円