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闘争から離れ、浮遊する美しさ

日本インテリアデザイン史 著者:鈴木 紀慶 出版社:オーム社 ジャンル:暮らし・実用

価格:3564円
ISBN: 9784274214370
発売⽇:
サイズ: 21cm/359p

社会や文化の流れとともに、「インテリアデザイン」が各時代の人の心にどのような影響を示したのか、あるいは社会的変革に対してどのように立ち向かったのかを通観する。内田繁×吉岡…

評者:隈研吾 / 朝⽇新聞掲載:2014年02月16日

■日本インテリアデザイン史 [著]鈴木紀慶・今村創平

 現在日本のインテリアデザインは、その質とユニークさにおいて、世界でもトップのレベルにある。しかし、今まで、その包括的な歴史をカバーする書物がなかった。その意味で本書は画期的であり、その意義は大きい。
 しかし、読み終えて、なぜ、今までインテリアデザインの歴史が書かれなかったかも、納得した。一言でいえば、日本のインテリアデザイン自体が「歴史」というものが伴うはずの葛藤、その結果としての、ダイナミズムを欠いているのである。すなわち、日本のインテリアデザインはポスト「歴史」、ポストヘーゲル的な真空状態を漂っているのである。世界史を見渡してみれば、インテリアデザインとは、本来闘争の場だった。階級や貧富の差異、都市と地方との格差、様々な対立、ギャップが、インテリアという立場を通じてせめぎあっていたのである。
 そのような緊張が、日本でも70年代の一瞬にだけあったことが本書からも伺える。その時、「商業空間だってインテリアというアートになりえる。」という発見、いや革命があった。68年に端を発する革命の時代が、日本のデザインの最も輝いた時代であった。倉俣史朗、内田繁、杉本貴志たちの世代がこの革命の主役であった。革命を突き抜けた後も、デザインの質が落ちたわけではない。世界をリードする、繊細で抽象的空間を日本は発信し続けた。しかしそこには、「敵」というものの姿がどこにも見えない。無重力空間を一人浮遊しているような美しさなのである。
 どこかで似たものを見た気がした。上質な数奇屋である。美しく、繊細で、日本人以外には到達しようのない境地。しかし、そこには敵が見えない。「それがなんなの?」という種類の孤立した洗練が、ただただ継続するのである。それが日本という閉じた場所の宿命なのだろうか。それともポストヘーゲル的な時代の産物なのだろうか。
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 オーム社・3465円/すずき・のりよし 56年生まれ、編集者。 いまむら・そうへい、66年生まれ、建築家。