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「満州事変はなぜ起きたのか」書評 ナショナリズムの取り扱いの難しさ

評者: / 朝⽇新聞掲載:2015年10月18日
満州事変はなぜ起きたのか (中公選書) 著者:筒井 清忠 出版社:中央公論新社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784121100221
発売⽇: 2015/08/07
サイズ: 20cm/205p

満州事変はなぜ起きたのか [著]筒井清忠

 歴史に切れ目はないのだから、歴史的事象を分析するのに、ある時代を切り取ってくることは本来できない。満州事変においても同様である。では、どこから書き出すか。著者が着目したのは「『大衆』の登場」である。日露戦争講和条約反対の日比谷焼き打ち事件にみられるように「大衆の時代」が始まりつつあったと説く。その「大衆の時代」にあって、日本は国際世論に訴え、理解を得るという戦略をまったく欠く一方で、軍部の「ずさんな謀略」や「満蒙は生命線」との「危険な論理」で暴走は続いた。その背後に「満州事変を熱狂的歓呼で迎えることになる大衆の世論があった」と指摘する。「ナショナリズムの取り扱いの難しさ」は今も変わらない。
    ◇
中公選書・1944円