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ご都合主義な合祀の事例

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2014年08月03日
靖国神社と幕末維新の祭神たち 明治国家の「英霊」創出 著者:吉原 康和 出版社:吉川弘文館 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784642082587
発売⽇: 2014/07/22
サイズ: 20cm/214p

靖国神社と幕末維新の祭神たち [著]吉原康和

 靖国神社は、明治国家の「官軍」側戦没者をまつる「東京招魂社」として創建されたのが始まり。その後、維新前に天皇を奉じて命を落とした「維新前殉難者」が次々に合祀(ごうし)された。元勲たちの師・吉田松陰や同志の高杉晋作、坂本龍馬らも後の合祀組。天狗党の乱などで粛清が続いた水戸藩からの合祀がトップで薩長や土佐より多い。禁門の変で、御所に向かって発砲した長州藩士のほうが、守護した会津藩士より27年も早くまつられた。陸軍の創始者・大村益次郎は明治初期に暗殺されたにもかかわらず大正期に合祀。こうしたご都合主義な事例を多く読むにつけ、やはり太平洋戦争の戦没者の慰霊の場にはふさわしくないだろうと思えてくる。
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 吉川弘文館・2484円