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「神の島 沖ノ島」書評 写真と文章で味わう神秘の地

評者: 角幡唯介 / 朝⽇新聞掲載:2013年07月28日
神の島沖ノ島 著者:藤原 新也 出版社:小学館 ジャンル:写真集

ISBN: 9784096820810
発売⽇:
サイズ: 31cm/136p

神の島 沖ノ島 [著]藤原新也、安部龍太郎

 びっくりしたという意味では近年まれに見る本だ。本書は写真家の藤原新也氏と作家の安部龍太郎氏が、玄界灘のど真ん中に浮かぶ沖ノ島を訪ねた時の写真と文章をまとめた大型本だが、こんな島が日本に残っていたことに驚かされた。
 本の題名が示す通り、沖ノ島はまさに神の島だ。何しろ島そのものが御神体。海の神に対して捧げられた宝物が多数発掘されており、「海の正倉院」と呼ばれるという。おまけに今でも女人禁制で、上陸の際には全裸で海に入り禊(みそぎ)をする必要がある。そんな神秘の地が福岡県のわずか60キロ沖合にあるなんて、この国も捨てたものではない。
 その島に藤原氏は島を畏(おそ)れそして祀(まつ)った古代人の目となって上陸する。収録された多数の写真は島に封印された彼らの情念や霊気がにじみだしてくるかのようだ。島にあつい信仰を寄せた宗像一族について著した安部氏の掌編小説も興味深く、見応えと読み応えのある作品となっている。
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 小学館・2940円