「わが盲想」書評 とびきり明るい筆致の奮闘記
評者: いとうせいこう
/ 朝⽇新聞掲載:2013年06月30日
わが盲想
著者:モハメド・オマル・アブディン
出版社:ポプラ社
ジャンル:エッセイ・自伝・ノンフィクション
ISBN: 9784591134573
発売⽇:
サイズ: 19cm/275p
わが盲想 [著]モハメド・オマル・アブディン
アフリカ・スーダンから1998年に来日した著者は、留学をしながら鍼灸(しんきゅう)を学ぶ。その時、視覚の病は進行中で“物の影がかすかに見えるほど”でしかない。そして……。
とびきり明るい筆致で初めての日本を描写し、祖国の政治情勢を書き、情熱的な日本人教育者たちの営為と自らの奮闘を記す本である。
そもそも私たちは世界各国から盲人を受け入れていることを知らないのではないか。彼らが歩く道を、まず「歩行訓練士」が共に行き、途中にどんな注意点があるかを念入りに示すことも、視覚に障害のある外国人に日本がどう聴こえる国であるか、も。
どんどん日本語を習得していく著者は、すぐにダジャレ好きになる。それは同音異義語が多い日本語の中で生きていくために必須の能力なのだ、と読者は知る。本の題名自体が「妄想」と「闘争」「盲目」から作られた造語だ。
さらっと読めるエッセーの奥に、私たちを新しく導く発見がたくさん詰まっている。
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ポプラ社・1470円