「ビターズ2滴半 —村上三郎はかく語りき—」書評 オマージュあふれる本自体がアート
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2012年08月26日
ビターズ2滴半 村上三郎はかく語りき
著者:坂出 達典
出版社:せせらぎ出版
ジャンル:芸術・アート
ISBN: 9784884162115
発売⽇:
サイズ: 21cm/179,143p
ビターズ2滴半 —村上三郎はかく語りき— [著]坂出達典
村上三郎(1925〜96)は、関西で活発だった具体美術協会に属した美術家で、「紙破り」のパフォーマンスで知る人ぞ知る。著者が兵庫県西宮市でバーを開いて間もなく村上は常連客になり、キリキリ冷やしたジンを飲み、おとなしくすごしたり、周囲で騒がしく芸術論が戦わされるとビール瓶をガチャンと割ったり、「エエのん決まってるやん」とつぶやいたり……。無意味であること、目的ではなく過程に価値があること。著者は村上の言行から芸術の根底にある「生きること」への肯定を受け取っていく。村上へのオマージュあふれる本自体がアート。表紙が「紙破り」キットになっていて、後ろから開くと英語版なのだ。
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せせらぎ出版・2600円