「デジタル・ポピュリズム」書評 個人毎に選別された情報環境
評者: 齋藤純一
/ 朝⽇新聞掲載:2018年07月07日
デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義 (集英社新書)
著者:福田 直子
出版社:集英社
ジャンル:新書・選書・ブックレット
ISBN: 9784087210347
発売⽇: 2018/05/17
サイズ: 18cm/220p
デジタル・ポピュリズム 操作される世論と民主主義 [著]福田直子
検索、クリック、「いいね!」……。ネット上での行動には、私たちの嗜好だけではなく、思想や信条もあらわれる。それが捕捉され、ビッグデータに集積されている事実はよく知られるようになった。本書によれば、収集された個人情報には、心理分析や格付けが加えられ、一人ひとりに「何を見せ何を見せないか」が決められていく。
とくに注目したいのは、今後の選挙運動は間違いなく小集団や個人といった「マイクロ・ターゲット」に向けて行われるだろうとの指摘である。その動きはすでに始まっており、先の米大統領選でも、不特定多数ではなく、結果を左右しうる個別の有権者に的を絞ったキャンペーンが実際に功を奏したようである。
『世論』の著者リップマンは一世紀前に私たちは情報バイアスのかかった「疑似環境」にあると述べたが、個人毎に選別された情報環境を何と呼べばいいのか。「同意の工学」にさらに脆弱になったことは確かだ。