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新書ピックアップ(朝日新聞2018年7月7日掲載)

『コンビニ外国人』

 コンビニで外国人に接客されることは都心では当たり前になった。簡単な日本語で済むコンビニで働く外国人の多くは留学生だという。様々な背景で日本にやってきた若者たちの日常と意見をインタビュー。人口減少で労働力不足の日本を支える彼らだが、「学びながら働ける国」として魅力的な時期はいつまで続くのか。日本語学校や外国人受け入れ制度の現状と課題を多様な声から考える。
★芹澤健介著 新潮新書・821円

『後醍醐天皇』 

 日本の政治、社会、思想、文化の一大転換期となった南北朝の動乱を引き起こした後醍醐天皇。密教や儒学を背景にした先例や家柄を顧みない政治手法は評価が分かれ、近世や近代にも大きな影響を与えた。鎌倉幕府倒幕を描く『増鏡』や南北朝の騒乱をつづった『太平記』、文観や楠正成らとの関わりから、その実像と虚像を検討、史上まれにみる帝王の出現で生じた政治史、思想史的な諸問題を考察する。
★兵藤裕己著 岩波新書・907円

『リサイクルと世界経済』

 品質のよい中古品として途上国で再使用される自動車や機械、再生資源に作り替えられる廃プラスチック。ただ、国境を越えたリサイクルの急拡大は、良いことばかりではない。再生工程での環境汚染、リサイクルできず廃棄物となるものの輸入など問題も発生している。国際的なルール作りが進行する近年の動きまでをリポート。
★小島道一著 中公新書・886円

『遺伝人類学入門』 

 近年大規模化する遺伝子研究。チンギス・ハンのDNAが東アジアに広がっているという説が唱えられたという。遺伝学や自然人類学の基礎を経て、ネアンデルタール人と現生人類の混血の可能性を考察。ミトコンドリアDNAとY染色体で男女による移動パターンの違いを追跡し、婚姻システムとの関わりを探究する。文化的な側面も含め、人類全体の遺伝子の歴史を解説する。
★太田博樹著 ちくま新書・1015円