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「生きている証」と「終わらない夢」 ももクロ10周年記念本に込められた思い

文:北林のぶお

 ももいろクローバーZは、常に前へと走り続ける。結成10周年を迎える今年は、1月にメンバーが1人卒業し、百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、佐々木彩夏の4人体制に。息をつく間もなく、5月に初の東京ドーム公演を成功させた。同時に発売された結成10周年アニバーサリー・ブックは、10年間の軌跡をたどる『CHAOS』、現在と未来を語る『COSMOS』の2冊構成。計600ページを超える盛りだくさんの内容だ。記念本の仕掛人である朝日新聞出版の藤井直樹氏は、「ももクロ」と並走しながら何を感じたのだろうか?

――「Quick Japan」編集長時代はどんなきっかけで、「ももクロ」をフィーチャーしようと思ったのですか?

 それまで3年半ほど編集長をやっていて、雑誌もまあまあ売れていて・・・・・・。でも、つくる前から部数は何となくわかるし、雑誌をつくる意味ってどこにあるのかなと、むなしかった記憶があります。

 そんな時、2011年2月でした。あるライブへ他のバンドを目当てに行ったら、最初に登場したのが「ももいろクローバー」だったんです。とにかく・・・・・・すごくて、自分の傲慢な方法論など全く通用しない。コピーで表現できないのは初めてなんですけど、コピーを付けたいって欲求もあるわけですよ。編集者として彼女らと向き合ったら、何が出てくるのかなという思いがありました。

――衝撃の出会いだったんですね。

 当時は6人組から早見あかりさんが脱退するというタイミングで、それをテーマにしようと取材を始めました。そうこうするうちに東日本大震災が起きて、世の中はエンターテインメントの存在意義が問われる空気で、実際に彼女らのツアーも白紙になっていました。それでも4月の卒業ライブは確定して、自分たちが今できるエンターテインメントをやろうと。僕もそこに一緒に居て、早見さんへの他のメンバーたちの想いとかも共有させていただいて、今までの自分が捨てていたような部分を体験できたんです。

 で、発売日と重なったライブで、そこでですよ・・・・・・。5人になって「ももいろクローバー」から「ももいろクローバーZ」に改名すると発表して・・・・・・。僕が達成感を持ってつくった本の表紙には「Z」はなくて、「ももいろクローバー」って書いてあるんです(笑)。やられたな、と思いましたね。達成感を2、3時間で塗り替えられてしまった。でも、彼女たちが感傷に浸るヒマもなく、翌日には慣れないトークイベントをしている姿を見ると、また一緒に仕事をしたいなと思って。そこから約7年間、現場に居合わさせていただいています。

――今回の結成10周年記念本も、1月に有安杏果さんが卒業したことによって、内容に大きな影響はありませんでしたか?

 卒業には驚きました。僕が知ったのも世間と同じタイミングなので。逆に、スイッチも入りましたね。当初は2冊とも過去を振り返る内容でしたが、メンバーが抜けたことで必然的に台割を白紙に戻しました。1巻目の『CHAOS』は、足跡の一つ一つに意味があって、それがあるから次の一歩が踏み出せるという、10年間のドキュメンタリー。2巻目の『COSMOS』は、現状のメンバー4人が10周年をどうとらえ、これからをどう考えるかという未来へのベクトルになっています。

 インタビューで感じたのは、彼女たちが今回の件も含めて、自分自身で考えて本気で向き合っていくという部分です。ファンが愛してくれた「5人のももクロ」というものに対する責任感や、申し訳ないという気持ち、でも歩みを止めないという決断を4人でしたことを、自分の問題として語る。普通はそれをファンに見せないやり方もあるんですけど、ももクロの流儀なんだろうなと思いますね。生身の彼女たちが、傷つくところも隠さずに、迷ったり心折れたりしながらも、ファンに支えられて強くなっていく。そこは魅力として見せたい部分でもあります。

――ロングインタビューに聖地巡礼グラビア、全曲解説、衣装図鑑などの多彩なコンテンツ。編集にあたって気を使われていた部分は?

 読者の方って、ファンや詳しい人もいれば、ちょっと気になったという人もいると思います。10年も活動していると、今から「ももクロ」を追いかけようと思っても、置いてけぼり感が出てくるのは否めません。そんな方々にも、取材の現場に立ち会っているかのような「空気感」を伝えたいと考えています。路上ライブの台本のFAXを載せたり、当時の雑誌の記事発言を拾ったりして、密度を上げていくというか。

 たとえば、メンバーの持ち込み企画で、玉井詩織さんが鯛を釣って、最後に「次はマグロを釣りたい」と話しています。編集している時に偶然わかったんですけど、2011年の雑誌のインタビューで「これからやってみたいことは?」と聞かれて、全く同じことを言っているんですよ(笑)。今と昔の言葉がリンクしていきながら、変わらない部分やすごく変わった部分を発見できるような仕掛けが散りばめられていて、読者の方がそれぞれの楽しみを見つけられたら、と思いますね。

2018年5月30日~6月4日、東京・松屋銀座で開催された「ももいろクローバーZ 結成10周年記念展~サイリウムが照らす未来~」の会場。連日多くのファンが詰めかけた

――結成10周年記念展「サイリウムが照らす未来」は、東京会場に続いて8月8日から21日まで大阪の大丸梅田店で開催。どのような形で携わっておられますか?

 「ももクロ」の10年を切り取るには、ライブ史からたどるのがいいのではないかと、ステージの模型などを提案したり、テキストや写真の提供もさせていただきました。「本をつくって終わり」からどれだけ離れられるのかというのが、昨年に転職した理由の一つ。ももクロさんが地方ライブなどでファンと一緒にモノをつくっているような関係性が、本をつくる人間である自分にもできたら、という思いがあります。

――今後の「ももクロ」に関わるお仕事の予定は?

 目先の予定では、10周年記念本にも参加したライターの小島和宏さんによる、ここ1年間の活動の舞台裏を詳細につづった密着レポートが、8月に当社から刊行されます。僕自身も、どこまで実現できるかはわかりませんが、いろいろと企画を構想しています。

――女性アイドルグループが固定メンバーで長く続けるのは大変だと思います。未来の「ももクロ」を、どのように想像していますか?

 誤解を招く言い方かもしれませんが、僕自身は「ももクロ」をいわゆる女性アイドルという枠組みではとらえていないんです。もちろん、振る舞いも含めて正統派アイドルという場面もありますが、それと同時に非常に人間くさい部分もあって、偶像と実像の両極を持つ人たちだと思うんですね。

 例えるなら、甲子園に出場する高校野球の投手。僕は野球をやっていたんですが、この年齢になっても、10代の彼らへの尊敬や憧れは変わりません。高3の夏の甲子園をずっと繰り返しているような、そんなテンションを続けることに挑戦している人たちが、ももいろクローバーZなんだと思います。これからもファンの人と一緒に年齢を重ねていくのでしょうし、僕としても飽きることは想像できませんね。