第6回河合隼雄物語賞・学芸賞の授賞式が6日、京都市内であり、小説「光の犬」(新潮社)で物語賞を受けた作家の松家仁之(まついえまさし)さん=写真左=と、新書「ケルト 再生の思想」(筑摩書房)で学芸賞を受けた多摩美術大学教授の鶴岡真弓さん=同右=がそれぞれあいさつした。
「光の犬」は、北海道の枝留(えだる)という架空の町を舞台に、家族の3代にわたる歴史を時間や場所、視点人物を切り替えながらつづる長編小説。作家の小川洋子さんは選考委員講評で「家族独特の冷たさ、残酷さ、どうしようもなさ。その中で登場人物ひとり一人のきらめきを描いている」と語った。松家さんは「(『光の犬』は)人が生まれて人が死にはするのですが、不可思議な出来事も手に汗握る場面もない。ただ黙って、彼らの言葉に耳を傾けるようにして書きました」と話した。
鶴岡さんの受賞作は、近年は日本でも広まったハロウィーンの起源がケルト伝統の季節祭であることを入り口に、死から生へと循環するいにしえの生命観を解き明かす論考。ケルト芸術文化史の第一人者である鶴岡さんは「散る桜を生命だとみる歌人がリアリストである国が、(ケルト文明と)合わせ鏡のように見えた。日本人論としてケルト論をやってきたところがあります」と語った。(山崎聡)=朝日新聞2018年7月23日掲載
編集部一押し!
- オーサー・ビジット 教室編 今を輝こう しなやかに力をつけてね 教育評論家・尾木直樹さん@高岡市立横田小学校 中津海麻子
-
- 杉江松恋「日出る処のニューヒット」 加速する冤罪ミステリー「兎は薄氷に駆ける」 親子二代にわたる悲劇、貴志祐介の読ませる技巧に驚く(第12回) 杉江松恋
-
- インタビュー 井上荒野さん「照子と瑠衣」インタビュー 世代を超えた痛快シスターフッドは、読む「生きる希望」 PR by 祥伝社
- インタビュー 「エドワード・サイード ある批評家の残響」中井亜佐子さんインタビュー 研究・批評通じパレスチナを発信した生涯 篠原諄也
- インタビュー きょうだいユーモア絵本「ぼくの兄ちゃん」が復刊! よしながこうたくさんインタビュー 子どもはいつもサバイバル 大和田佳世
- BLことはじめ BL担当書店員の気になる一冊【2024年1月〜3月の近刊&新刊より】 井上將利
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(後編) 辞書は民主主義のよりどころ PR by 三省堂
- インタビュー 新井紀子さん×山本康一さん対談(前編) 「AI時代」の辞書の役割とは PR by 三省堂
- インタビュー 村山由佳さん「二人キリ」インタビュー 性愛の極北に至ったはみ出し者の純粋さに向き合う PR by 集英社
- 朝日ブックアカデミー 専門外の本を読もう 鈴木哲也・京大学術出版会編集長が語る「学術書の読み方」 PR by 京都大学学術出版会
- 朝日ブックアカデミー 獣医師の仕事に胸が熱く 藤岡陽子さんが語る執筆の舞台裏 「リラの花咲くけものみち」刊行記念トークイベント PR by 光文社
- 朝日ブックアカデミー 内なる読者を大切に 月村了衛さんが語る「作家とはなにか」 「半暮刻」刊行記念トークイベント PR by 双葉社