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ヒル魔の奇策がおもしろい! フェンシング・松山恭助さん(前編)

文:熊坂麻美、写真:清永洋

「アイシールド21」(集英社、全37巻)

 「競技は違っても自分の感覚や体験と通じる部分が多いから、スポーツの漫画が好き」

 そう話す松山恭助さんは、フェンシング日本代表のキャプテン。『GIANT KILLING』や『SLAM DUNK』、そして今回紹介してくれた『アイシールド21』(原作・稲垣理一郎、作画・村田雄介)は、中学生の時によく読んでいたお気に入りのスポーツ漫画だという。

 『アイシールド21』は2002年から2009年まで「週刊少年ジャンプ」に連載されたアメフト青春漫画。個性あふれるキャラクターをそろえ、日本ではマイナースポーツとされるアメリカンフットボールの魅力を丁寧に描いて大ヒットした。この作品がアメフト人口を増やすきっかけになったともいわれている。

『アイシールド21』22巻、P81より ©米スタジオ・ビレッジスタジオ/集英社
『アイシールド21』22巻、P81より ©米スタジオ・ビレッジスタジオ/集英社

 主人公は気弱な高校生・小早川瀬那。自分を変えるために泥門高校アメフト部に入った瀬那は、それまでの“パシリ”で自然と磨かれた俊足を武器に「アイシールド21」(エースランナーの称号)として活躍するように。弱小チームだった「泥門デビルバッツ」はライバルたちとの戦いで成長し、全国大会決勝(クリスマスボウル)を目指していく。

 「アメフトってなじみがなかったけど、『アイシールド21』はルールを知らなくてもわかりやすいし、みんなが一つの目標に向かって頑張るっていうのが、やっぱりいいなと。ストーリー性も好きだし、予想外の試合展開が多くておもしろいんですよ。漫画とはいえ、すんなり勝てたりミラクルがやたらに起きたりしない、勝負事の難しさがちゃんと描かれているところも好きですね。チームメイトとわいわいやる感じは高校の部活っぽさがあって、読んだのが中学の頃だったので、そういう青春にちょっと憧れたりもしました」

 「脇役よりも目立つキャラが好き」という松山さんが、主人公の瀬那を含めて心惹かれたキャラクターが三人いる。ひとりは瀬那のライバルである進清十郎(しんせいじゅうろう)。スピード、パワー、テクニック、メンタル、頭脳、すべてを備えた高校アメフト界屈指のプレーヤーで、才能に甘んじることなくストイックに高みを目指す「努力する天才」だ。

 「進は実力者なのに自分を追い込んで進化し続けるのがすごいし、感情を表に出さないで、いつも淡々と相手より勝るのがカッコいい。自分も周りからクールと言われたりするので、ちょっとシンパシーを感じるところがあるのかもしれません。こんな風になれたらいいなあとも、思いますね」

 そう話す松山さんの凛としたまなざしは、どことなく進に重なるようにも見える。

 作中、天才・進との初めての対戦で圧倒的な力の差を見せつけられた瀬那は、一度は逃げ出そうとするものの、闘うことを決意する。そして進をはじめさまざまな強敵に挑み、ひとりの人間としても成長していく。「壁を前にしたときどう行動するか」は『アイシールド21』のテーマでもある。気弱だった瀬那が少しずつ強くなる姿が印象的だったと、松山さんは言う。

 「瀬那は試合を重ねるにつれ、プレーもメンタルもどんどん成長していきます。ステップとフェイントで相手を抜くデビルバットゴーストとか、相手を飛び越えるデビルバットダイブとか、試合中に繰り出す技も好きで。小柄な瀬那が強い相手を抜き去っていくところに、すごいワクワクするんですよね」

 そして好きなキャラのもうひとりが、泥門デビルバッツのクォーターバック「ヒル魔」こと蛭魔妖一(ひるまよういち)。司令塔としてチームを叱咤し、明晰な頭脳と手段を選ばない狡猾さで相手を翻弄するヒル魔は、作品の“裏主人公”としても人気を誇る。

アメフトに偶然はねえ ラッキーパンチってのは狙って出すもんだ! (2巻より)
持ってるカードの力が10%っきゃねえなら カードの切り方で120%にする…!(31巻より)

 「見た目は軽薄な感じだけど、ヒル魔は実は仲間思いで超一流の戦術家。総合力でかなわない相手にも、彼の多彩な戦術やずる賢さで泥門デビルバッツは勝ち上がる。それが見ていてすごく爽快だし、要所要所でヒル魔が言うセリフも心に響きます。僕がやっているフェンシングも戦術が重要です。状況に応じて自分たちの手札の切り方を変えたり、駆け引きをしたり、ヒル魔がやっていることって、フェンシングに置き換えることもできるから、そういう目線でも楽しめるんです」

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