1994年生まれの新鋭作家が描く戦国ファンタジー『龍にたずねよ』(みなと菫〈すみれ〉著、講談社・1296円)は、一気読み必至のスピード感あふれる物語だ。
時は戦国。青海(あおみ)の国の領主の末娘・八姫は、勝ち気な14歳。龍の伝説がある萩生(はぎう)に、人質として送られる。そこで出会うのが、隠居した大殿の雑用をしている謎の少年。ある時、萩生は大国に襲われる。八姫は大殿や少年らと力の限り立ち向かう。
クライマックスで登場するのが萩生の龍神(りゅうじん)だ。八姫が龍神に問う。「この戦乱はいつまで続くのでしょうか。いつ、人間は争いを止(や)めることができるのでしょうか」。龍神が答える。「すべての人間がそれと気づき、悟るまで」「神は汝(なんじ)ら人間にこの世のすべてを任せたのだから」
愛と友情、戦と平和、人外のものへの畏怖(いふ)、それらがカクテルになって鮮烈な味わいを醸し出す。少年少女に向けた本だが、大人が読んでも考えさせられる。「あなたは純粋な心を持ち続けていますか」。そう問われているような気持ちになった。(西秀治)=朝日新聞2018年8月11日掲載
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