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脱タブー、キャラで身近に 女性の性かわいく擬人化

小山健「生理ちゃん」(KADOKAWA/エンターブレイン)

 世界の国々そのものを擬人化した日丸屋秀和「ヘタリア」、体の細胞を擬人化した清水茜「はたらく細胞」など、あらゆるものがキャラクターとしてマンガ作品に描かれる今日。最近では、なかなか声に出して話題にしにくい「女性の性」の問題が、かわいい擬人化キャラクターを使って描かれ、注目を浴びている。

 小山健の「生理ちゃん」は、そのタイトルの通り、「生理」をおちゃめなキャラクターとして描いた作品だ。月1回、女性のもとに現れてはおなかに容赦のない「生理パンチ」をくらわせ、大きな注射器で血液を奪い、眠り薬で眠くさせる。忙しい時でも、失恋して悲しい時でもお構いなし。仕事がうまくいかない女性ライター、世界を守る変身ヒロインの女子高生、江戸時代の町娘……。ありとあらゆる事情を抱えた女性たちのもとへ、「生理ちゃん」はやってくるのだ。

小山健「生理ちゃん」(KADOKAWA/エンターブレイン)から©小山健/KADOKAWA

 やっかいな存在だが、時には一番の理解者として寄り添ってくれることも。生理の辛(つら)さを軽くみる男を一喝してくれたり、一緒にお酒を飲んで慰めてくれたりするのだ。こんな憎めないキャラだと思えば、毎回の生理も楽しく感じられそうである。

 本作はテーマがテーマなだけに男性には手に取りにくいだろう。しかし、作者が男性であることもあってか、「週刊少年ジャンプ」作品のパロディーが随所に出てきたり、「性欲くん」など男性が共感できるキャラクターも登場したりするので、男性の読者も十分楽しめるはずだ。理不尽な理由でイライラする女性に対しても「生理ちゃんがいるんだな」と、おおらかな気持ちで構えることができるようになるかもしれない。

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 生理以上に大きな声で話せない話題が、婦人病である。膣(ちつ)カンジダを主題にした、新星エビマヨネーズ「月室(つきむろ)のキャンディーダちゃん」は、再発した膣カンジダの処方薬「エンペシドL」の広報WEBマンガ。現実世界で働くエミさんと、エミさんの膣内「月室」で暮らすお姫様の「キャンディーダちゃん」の二つの世界が描かれる。

新星エビマヨネーズ「月室のキャンディーダちゃん」(佐藤製薬ホームページのWEBマンガ)から

 エミさんがストレスを感じると、キャンディーダちゃんが荒ぶり、悪さをするのだが、その模様で膣カンジダの仕組みがよく分かる。「性病」と勘違いしている人も多い膣カンジダの正しい知識をかわいい擬人化キャラクターで解説してくれるのだ。文字で説明されるより頭に入ってくるし、病気が身近に感じられ、ほっとする女性も多いのではないだろうか。

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 そして、最後に紹介したいのは、たかはしみき「わたし、39歳で『閉経』っていわれました」だ。最近、アラフォーの仲間入りした筆者には衝撃的なタイトルで、早期閉経の原因や作者が実践した治癒法などが細かく描かれているが、ほのぼのとした絵柄と「閉経」をキャラクター化した「閉経さん」のおかげで、自分にも隣り合わせの重い題材も軽やかに楽しみながら読むことができた。

たかはしみき「わたし、39歳で『閉経』っていわれました」(主婦と生活社)から©たかはしみき/主婦と生活社

 マンガはあらゆるタブーを越えていくことで進化してきたジャンルであるが、この一連の擬人化もまた、一つタブーの山を越えたのではないか。次は何が擬人化されるのか、楽しみだ。(倉持佳代子・京都国際マンガミュージアム研究員)=朝日新聞2018年8月31日掲載