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在野で書き残す「破壊の嵐」 宮川徏さん「よみがえる百舌鳥古墳群」

宮川徏(すすむ)さん 百舌古墳群を見守る歯科医

 ユネスコの世界文化遺産の候補となった堺市の百舌鳥(もず)古墳群。在野の考古学者として古墳群の研究と保存運動に関わってきた堺市の歯科医、宮川さん(85)が「よみがえる百舌鳥古墳群 失われた古墳群の実像に迫る」(新泉社)を刊行した。
 「世界遺産で注目されている今こそ、古墳群が破壊の嵐の中にあったことを書き残さなければ、と思いました」。農学校1年の時に終戦。翌年秋、自宅近くの七観(しちかん)古墳で鉄の矢じりをみつけ、教師に報告した。「それがきっかけで始まった京都大学の発掘調査を手伝い、考古学にのめり込みました」
 戦後復興と経済成長の中で、土砂採取や宅地化のために破壊されていく古墳を仲間と一緒に発掘し記録した。55年、全長約146メートルのいたすけ古墳が破壊されそうになった時には保存運動の中心となり、史跡指定にこぎつけた。
 著書では考古学者の間に対立や競争意識があったことを包み隠さず書いた。「歯科医のかたわら考古学に携わったからこそ客観視できたことも多かった」(編集委員・今井邦彦)=朝日新聞2018年9月12日掲載