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大野拓朗さん、映画「旅猫リポート」インタビュー 原作者・有川浩との関係 

文:永井美帆 写真:斉藤順子 スタイリスト:TAKAFUMI KAWASAKI (MILD)

本を読むときは一文字も逃したくない

 読書家で知られる大野さん。原作について尋ねると、勢いよく返事が返ってきた。

 「もちろん読みました! 単行本の帯も書かせてもらいましたし、3回は読んでいます。本を読む時、一文字たりとも逃したくないんです。例えば、接続詞が『だから』なのか、『そこで』なのか。それだけで全く印象が変わりますよね。文学って言うのは『無』から物語を生み出すアーティスティックな活動だと思うから、作家さんをすごく尊敬しているし、細部まで逃したくないんです」

 中でも有川さんの大ファンだと公言する。以前にもドラマ「三匹のおっさん」シリーズで正義感の強い青年を演じ、有川作品への出演は2度目。だが、敬愛する作家の作品に出ることに、気負いはないと話す。「だって、世界中の誰にも負けないくらいの有川ファンだって自負していますから(笑)。その僕が演じるということは、誰よりも作品のことを理解しているし、適任だと思っています」と自信をのぞかせる。

©「旅猫リポート」製作委員会 ©有川浩/講談社

 出演が決まり、台本を手にした時、何度も読んだ話なのに思わず号泣したという。「いろんな小説を読んできましたが、どの作品も300、400ページの中に、ものすごい世界が詰まっていて。それを2時間の映画で表現することって本当に難しい。でも、今回の『旅猫リポート』は原作ファンの目線からも大成功だと言えます! 原作を読みながら、『僕が演じるならスギだな』って勝手に想像していました。すでに自分の中にスギっていう人間が完璧に入っていたので、役作りする必要もないくらい。スギは純粋で、優しいけど、なかなか自分に自信が持てない。だから友人の悟にも嫉妬してしまう。見ている方が『大丈夫だから、自信を持って!』って思わず応援したくなるようなキャラクターを意識しました」

 時を経て、幼なじみの千佳子(広瀬アリス)と結婚したスギは、夫婦で犬猫も泊まれるペンションを営む。そんな2人のもとにナナの新しい飼い主を探す悟がやって来る。撮影は昨年3月、自然豊かな長野の高原で行われた。そこには毎日のように原作者・有川さんの姿があった。実は大野さんと有川さんは以前から親交があるという。

有川浩さんの文章とは相性がいい

 「有川先生とはマブダチです(笑)。『三匹のおっさん』への出演以来なので、もう4年になるのかな。先生の作品は全て読んでいるから感想を伝えたり、制作裏話を聞いたり。有川先生はすごく気さくで、勉強熱心な人。『塩の街』『空の中』『海の底』の自衛隊三部作ではものすごくたくさんの文献を読んだし、児童養護施設を舞台にした『明日の子供たち』では実際に施設に取材に行って書いたそうです。だから今回も撮影現場に来て、いろんなものを見て、作品にいかしたいっていう思いがあったんだと思います。現場では自由気ままなナナの気を引く役目を自ら買って出て、カメラの後ろに立って『ナナ! こっち向いて!』って呼んでいました」

 憧れの作家と親しくなり、さらに作品にも出演するなんて、いち読者からすると夢のような話だ。「改めて考えるとすごいことですよね。有川先生の作品って登場人物が粋なんです。だから読んでいて気持ちがいいし、心が温かくなる。そして、文章の相性がいいというか、自分の中にすっと入ってくるんです。他の作家さんだと、西加奈子さんの文章も好き。形容詞の使い方が優しくて、『まあるくて、大きい』みたいな情感あふれる表現をするんです。一方で、悲しい場面ではどん底まで突き落とされるから、すごいですよね」

 他にも、伊坂幸太郎、湊かなえといった多くの作家を尊敬し、移動中や就寝前などに読みふける。「伊坂さんだと『陽気なギャング』シリーズも好きだし、『グラスホッパー』も外せない。文章を読む時と同じで、好きな作家さんの作品は一冊も逃したくなくて。全部読破してから次の作家さんにいきたいんだけど、伊坂さんは出版のペースが速すぎて、正直追いつけていないです。さらに今、NHK大河ドラマ『西郷どん』で中村半次郎を演じているので、『人斬り半次郎』(池波正太郎)も読み進めています」

 大野さんの読書の日々は、今後も続きそうだ。

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