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映画「架空の犬と嘘をつく猫」主演・高杉真宙さんインタビュー 家族も他人「噓に救われることもある」

高杉真宙さん=有村蓮撮影

(C)2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会

個人の軸が集合して「家族」に

――キャスティングの段階から制作陣の間では「山吹は高杉さんしかいない」と言われていたそうですが、演じた役を含め、脚本を読んだ感想を教えてください。

 そう言っていただき、この作品に関われたことをとても幸せに思います。僕たち俳優は声をかけてもらえないと役を演じることもできないので、原作を読んで想像してもらえるのは嬉しいですね。

 僕は脚本を読んだ時、山吹に完全にフォーカスして読む物語というよりは、家族全体像の中にそれぞれ個人の軸があって、それが集合して大きな軸になっている作品だなという印象を受けました。山吹は自分から行動するというよりも、家族の心情や行動を受けて動いていくことがほとんどだったので、僕も率先して動くタイプではないから、そこはひとつ共通しているところたったかなと思います。

――母親のために、弟のふりをして手紙を書き続けた山吹の心情を思うと切なくもなりましたが、高杉さんは山吹の取った行動をどのように思いましたか?

 他のことも含め山吹のことは理解できますが、共感するという部分ではやはり物語なので難しいところもありました。山吹は家族にも他人にもなかなか「NO」と言えず、初恋相手のかな子に振り回されるのですが、僕は嫌なことは「嫌」とはっきり言うと決めています。そうしないと、ちゃんと周りの人に気づいてもらえないですから。でも、なぜ山吹がこういう行動をしてこんな思考を持つようになってしまったのか、それ故に、彼の人生がこうなっていくというところは理解できました。

「頭の中で犬を飼う」

――山吹を演じるうえで大事にしたことや意識したことを教えてください。

 僕が山吹を演じるにあたって軸にしていたのは、彼の優しさという部分でした。きっと山吹自身は、もともとそんなに優しい子ではなかったと思うんです。幼少期のある出来事がきっかけで、優しく生きていくこと、罪を背負って生きていく覚悟を持っていたのかなと思います。あとは、山吹は「優しい」という言葉が嫌いなんじゃないかなとも感じていました。「優しい」は必ずしも褒め言葉ではないし、自分でそう思ってやることだけで僕は十分だと思うし「優しい」って人がかける言葉ではないと思っています。

 あとは家族それぞれとの距離感ですね。僕も弟が2人いるのですが、個性もお互いの関係性も違うから、言い方が多少変わることもあります。そういう家族一人ひとりとのやりとりや、間の違いがうまく出せたらいいなと思っていました。

――作中、山吹の「どうにもならないときは頭の中に犬を飼ってそれをなでる」「生きていくのにちょうどいいやり方やったけん」といったセリフがありましたが、このセリフからどんなことを感じましたか?

 山吹が頭の中で犬を飼うように、それに頼らなきゃいけないことの悲しさはあるなと思います。でも、それが彼の生きてこられた秘訣なのかなと思うし、きっとみなさんにも、忘れているだけとか、今はもうそれに頼らなくてよくなっただけで、それぞれあると思うんですよ。

――それがあることで、自分で自分を落ち着かせたり、モヤモヤした思いを消化させたりできるものがあるのはいいことだと思うのですが、高杉さんはそういったものありますか?

 僕はよく寝る、よく食べることを大切にしています。寝食を整えることで自分のバランスが保て、それが心身の健康にもつながるのかなと思います。特に食べることは人間の欲の中でも一番純粋に生きていくことに直結していると思うので、それをないがしろにしないようにしようと年々思いますね。

程よい距離感を保つには

――自分を守るための嘘や誰かのためにつく嘘など「嘘」にもいろいろありますが、本作を通して「嘘」についてどんなことを思いますか?

 嘘そのものが悪いことではないという考えは以前とあまり変わっていませんが、必ずしも嘘という言葉だけを悪者にしない方がいいのかなと、今作を通じて改めて考えました。本当に使いようですよね。「嘘」に救われることも、それで成り立っている部分もたくさんありますし、僕は全てを知る必要はないと思っているので、正直に何もかも言うことが正解でもないと思います。

――弟の面影を追う母、浮気する父など、山吹にとって「羽猫家の家族」はどんな存在だったと思いますか?

 家族って、難しいですよね。自分にとって深いかかわりがある人は「家族」と総称してもいいのかなと思うので、そういう意味では、きっと山吹にとっての「家族」という存在はたくさんいたんじゃないかなと思います。

――本作のキャッチコピーに「家族をやめたい人たちへ」とありますが、本作を通じて「家族」について考えるようになったことはありますか?

 家族との関係で悩んでいる人も少なくないと思うのですが、僕はどう頑張っても家族は他人であり「自分以外の人」だと思っています。森ガキ監督は家族という存在を「表裏一体」と言っていましたが、その中でどうすり合わせていくかが大切なのかなと思います。「家族」ってとてもミニマムな世界じゃないですか。幼少期はその世界がほぼメインで、そこから学校という新たな世界が生まれて、成長とともに社会という世界とも関わりが深くなっていくけど、どれだけ一緒に過ごしていてもずっと同じ環境で生きているわけじゃないから、価値観も考え方も違って当たり前なんですよね。その程よい距離感の保ち方が難しいなと思います。

――この作品がどんな風に届いてほしいと思いますか。

 見た人を優しくできる力を持っている映画だと思っています。僕自身、年齢を重ねるにつれていろいろな考え方をするようになりました。最近は、すれ違う人や全然知らない人にも「彼らなりの背景やいろいろな事情がある」ということを感じながら生きていきたいなと思っているんです。それはある種の優しさにもつながるんじゃないかなと思っているので、そのことを感じさせて、考えさせてくれる作品でした。

――知らない人の背景も考えるようになったのは、なにかきっかけがあったのでしょうか。

 そう思うことで自分が楽になることが多いなと感じるんです。例えば、番組に出る時は今でも緊張するのですが、この場を作るために多くの人たちが関わって、ゼロから始まったものができた段階に自分がいるだけで、そこに至るまでのストーリーはたくさんあるんだなと思うと、僕も一層頑張れるし、どこか肩の力が抜けるような気がするんですよ。

 今もこのスタジオで取材させてもらっているけど、ここにたどり着くまでにいろいろな人のストーリーがあったと思うと、人に対しても優しくなれるようになりました。そういったことがこの作品にはギュッと集約されているなと思います。自分だけじゃない、他の人たちの事情があって、それが集合したのが「不完全だけどどこか愛おしい人たち」というところも好きです。

将来の世代になにか継承できるように

――以前出版した「僕の一部。」では、漫画の蔵書は約1500冊(出版時)というほど漫画好きでもある高杉さんですが、今日もおすすめの作品をご紹介いただけるということで!

 今回は『スピリットサークル』(水上悟志著、少年画報社)という漫画をおすすめしたいなと思います。主人公が前世をさかのぼって、輪廻転生しながら追体験をしていく話なのですが、その中で出会う人たちも現世で出会っていて、巡りのようなものを感じる作品なんです。時代をさかのぼっても大切な人たちは変わらないのかなと思わせてくれる作品でした。

 僕は前世や来世をあまり意識してはいないのですが、最近は「これはあのこととつながっているのかな」と思うことや、継承していくことを特に感じています。将来、自分の子どもやこれから生まれてくる子どもたちへ向けて何か継承できるように、僕たち大人がそれを意識していかなきゃいけないなと思うようになりました。

好書好日の記事から

高杉真宙さん、漫画の蔵書は1500冊! 13歳からの俳優人生を支えた「僕の一部。」